そんな自分が情けなくて、やるせない。
「私は……母親失格……っ。快人に会えなくて当然なのよ……」
母親失格なんて悲しいことは言わないで。
俺の中で母さんは、世界で一番の母親だから。
誰に自慢しても恥じないような最高の母さんなんだよ。
だから、母さん……泣かないでくれよ。
最後くらい、俺は母さんの笑った顔が見たいからさ。
「母さん……そんなことないから……滝沢悠未は俺の世界一の母さんだよ」
気づけば、ずっと心の奥に閉じ込めていた言葉が音になった。
もう隠しきれなかったのだ。
こんなにも俺を想って、泣いてくれる母さんを見ていたら黙っていることなんて無理だった。
忘れられていると思っていたけれど、本当は違った。
幼い頃の記憶だけどずっと母さんは俺を覚えていてくれていた。
少しでも母さんの中に“快人”という存在がいるだけでいいんだ。
多くは望まないねぇから、どうかその記憶だけは消えないでくれ。
「……何言ってるのっ?カイトくん、私はあなたのお母さんじゃないわよ?」
きょとんとした表情で不思議そうに俺を見つめている母さんの手をぎゅっと強く握った。
どこにも、行かないでくれよ……母さん。