「まだ小さいし、私の助けがいるのに……どこにいるんだろう?親戚のお家にお世話になってるのかな。もしかしたら私のことなんて忘れているかもしれないけど……あとね、名前もカイトくんと同じだったの。早く会いたいなぁ」
母さんは……俺が幼い頃の記憶しかないのだと今初めて知った。
大きくなってからの記憶はないということか。
それでも、俺のことを少しでも覚えていてくれているということがただ純粋に嬉しかった。
今まで他人として過ごした三年間で俺の話なんて全く出てこなかった。母さんはずっと誰にも言わずに胸に秘めていたのだろうか。
「私のたった、一人の……っ、大切な息子なの……っ」
「っ、」
母さんは顔を両手で抑えて言葉を詰まらせながら言った。
ポタポタと白いシーツの上に落ちる涙が丸いシミをつけていく。そんな母さんを見ていると視界が歪んで、じわっとうすく涙の膜が張る。
「あの子に……っ、私は何もしてあげられなかった……っ」
そんなことない。
母さんはいつも俺のことを考えてくれていた。
俺が少しでも辛くないように、苦しまないようにいつもそばにいてくれたんだ。
だから、だから、どうかそんなふうに思わないで。