「今日が、最後だからさ……」

「そっか。わざわざありがとう」

「うん」


だけど、すぐに会話が途絶えてまう。

『体調にはくれぐれも気を付けて』とか『俺もこうやって話せて嬉しかったよ』とか他にも伝えたいことは頭にたくさん浮かんでくるのにそれがどうしてだか言葉にならない。

あと数時間も経てば、ここから母さんはいなくなってしまうのに。もうこんなふうに会話ができなくなるのに。

俺はこれから親戚の家に世話になって、母さんとはしばらく会えない日々が続くだろう。

いくら心が嫌だと叫んでも、現実は変わらない。

俺に母さんにしてあげられることなんてもう何もない。


「……今日が、最後かぁ」


寂しそうな、名残惜しそうな、どちらの意味でもとれるような表情で母さんは笑って言った。


「……」

「私ね、カイトくんと一緒にいると自分の息子のことを思い出すの……」

「えっ?」


ぽつり、と小さな声で吐き出された言葉に俺は自分の耳を疑った。