ゆっくりと扉を開けると、そこにはベッドの上でひっそりと座り、どこか寂しそうに窓から見える青く澄んだ空を見上げている母さんがいた。
母さんはいつもこうして俺が来る前は外の景色を見つめていることが多かった。
きっと、外に出たかったのだろう。
こんなことになったのも全部、俺のせいだ。
母さんは扉が開く音が聞えたのか空からゆるりと視線をこちらに向けて、入ってきたのが俺とハルだということに気がつくと、目を大きく見開いた。
この前はあんな愛想のない感じで出ていってしまったからきっともう来ないと思っていたんだろうか。
「どうしたの……?」
目を見開いたのは一瞬ですぐにいつもと何ら変わりのない優しい笑顔を俺に向ける。
その大好きな笑顔を見られるのも、その柔らかい声が聴けるのも、こうして何気なく会話ができるのも、今日が最後だと思うと胸がどうしようもなく切なく疼いた。
母さんの問いかけに上手い言葉が出てこず、黙っていると後ろからハルが俺の背中をポンッと軽く叩いた。
それはまるで、“頑張れ”そう言われているように感じた。
だから、自然と口が開いて言いたいことを声にすることが出来た。