そんな彼のおかげで瓦礫が少し持ち上がり、隙間ができた。彼が持ち上げてくれているうちにシュッと挟まっていた体を抜いて、瓦礫から抜け出すことができ、ホッと胸をなでおろした。

幸い、歩けないほどの怪我ではなく痛みを堪えて立ち上げる。


『渉くん……!ありがとう……!』


渉くんがいなかったら、今頃、瓦礫から抜け出せなくてそのまま死んでしまっていたかもしれない。


『お前が無事で何よりだ。さあ、ここは危険だから早く外に出よう』


パッと前を見ると火の手が先程よりも確実にこちらへと迫ってきていた。

そして、二人で外を出ようと歩き出した瞬間。

それはたった、数秒だった。
だけど、私にはそれがスローモーションのように思えた。


『陽音……!危ない……!』


後ろからそんな声が聞こえてきて、渉くんにドンッと背中を強く押され、前の方に倒れこんだ。

そのすぐあとにたくさんの瓦礫が渉くんの頭上に降ってきてそのまま彼は瓦礫の下敷きになってしまった。


『う、ウソ……っ』


信じられなかった。

自分がつい先程まで立っていた場所に今は瓦礫が散乱しているだなんて。


『渉くん……!!ねえ!!しっかりして!!』


幸い、私は瓦礫の下敷きにならずに済んだ。