目覚まし時計がなる時間、僕はいつも2階にある拓馬くんの部屋の勉強机の横にいる。
「たくまー!朝ごはんだよー!」
あ、1階にいるお母さんだ。

拓馬(たくま)くんのお母さんはすっごく優しい。
初めてこの家に来た時も僕の汚れていた体を拭いてくれた。

拓馬くんは保育士のお母さん、会社員のお父さん、そして5歳の妹の沙耶(さや)ちゃんの4人家族。
誰がどうみても仲が良くていつも笑い声が絶えない。
僕はみんなと一緒にいれてすっごく幸せだ。

「たくまー!」
お母さんに呼ばれてるのに拓馬くんは全然動かない。
いつもそうだ。拓馬くんは朝に弱い。
一緒に居続けてもう5か6年だけど拓馬くんが早起きしてるのを1度も見たことない。

「拓馬!起きなさい!」
階段を登ってきたお母さんが布団を剥がす。
今はもう3月中旬の終わる頃だから寒いだろうな。
「んー」
「早くしないと遅刻するよ!」
拓馬くんは勢いよく起きて1階のリビングへ行った。
そんな様子を微笑ましく見る。

拓馬くんは学校が好きだ。
友達が多い拓馬くんは勉強はできないようだけど運動は得意。
体育の時間は汗だらけになって走り回ってる、らしい。
僕は見たことないけれど。

そんな拓馬くんは学校から帰ってくるとよく学校での話をする。
この前は小さい時からの親友である修弥くんと喧嘩したって落ち込んでた。
けど拓馬くんなら修弥くんと仲直りできるって信じてる。
誰よりも優しいから。

朝食後、拓馬くんは僕と一緒に学校へ行った。
1時間目は算数で中学生になるための予習をやっていた。正負の数ってやつ。
僕は全く勉強ができないから授業中ずっと頭の中に"?"が100個くらいあった。
拓馬くんにはちゃんとした中学生になってほしいからしっかり勉強して欲しいなあ。

よくわからない授業が終わって中休みになっても修弥くんと拓馬くんは話さなかった。
すれ違う時もお互い気まずそうに目を逸らす。
普段なら2人でクラスのみんなを誘って外に行って遊んだりするのに。

「おい、修弥」
おっ!拓馬君が話しかけに行った。頑張れ!
「ごめん、この前は言い過ぎた」
「別に....俺も言い方が悪かった。ごめん」
「よし、これで仲直りな!でもあれは修弥が悪いと思う」
拓馬くんっ!それ言わなくてもよかったのでは....?
「んだよ、謝ってるやん」
またもや喧嘩勃発!?

「そういや何で2人喧嘩してたの?」
近くにいた琴音ちゃんが聞く。
琴音ちゃんありがと!話題を逸らしてくれた!
「あー何だっけ?修弥、わかる?」
忘れてたんかーいっ!
「ふふ、拓馬やば」
琴音ちゃんと修弥君に笑われて拓馬くん恥ずかしそう。
修弥くんの話によると鬼ごっこしてる時にタッチしたか、してないかで揉めたらしい。
2人で言い合ってる時に拓馬くんが「お前のことなんか嫌い」って口走ってしまい修弥くんに「前から思ってたけどそういうところが幼稚なんだよ」って言われたとのこと。
喧嘩した原因を忘れたことをイジられた拓馬くんは「仲直りできて嬉しかったから....」と照れていた。
何事にも素直で一生懸命な拓馬くんのことを僕は好きだ。

とにかく、結果仲直りできたし一件落着。