工場の中に一部屋だけ明かりが漏れている。


「きっとここにいるわね」


「そうだな。俺が扉を開けて見るから隠れてて」


「分かったわ」


涼気が思いっきり扉を開けると、中には呑気にお菓子を食べてる華音がいた。


「あれ？ 涼気じゃん。大丈夫だった？」


「何でそんなに平和そうに過ごしてるんだよ」


「いや、だって私おとりだって言われて監禁されてたからさ」


涼気は安否を確認するまで少し不安だった自分の心が無下にされたように感じた。


「浮気したあげく騙されてた癖に……」


「全部聞いたんだ。ごめんね、私貧しい人よりもお金持ちに惹かれたの」


「別にいいさ」


涼気が合図をすると玲香が入ってきた。


「俺も新しい彼女が出来たからさ」


「女慣れしてない涼気がすぐに乗り換えた訳？」


華音は玲香の方を見ると、服装に驚きを隠せなかった。


「あなた、その着てる服ってカルビーウェスターの新作よね？ 鞄は限定品だしそのイヤリングはロイヤル会員しか買えないもの……」


「ええ、そうよ。涼気が全部買ってくれたわ」


華音は目を見開いて涼気を見た。


「何でそんなにお金持ってるのよ？ 私と付き合ってた時には貧乏だったじゃない！」


「君と別れてから運気が良くなってね。あっと言う間に大富豪になったんだよ」


「信じられない……」


華音はお金に目が眩み、涼気の手を握ってきた。


「私が悪かったわ。過去のことは水に流して、また一からやり直しましょ！ ね？」


涼気は華音の手を振り払い、玲香の腰を抱き寄せる。


「悪いけど、俺にはもう彼女がいるから。じゃあもう行こうか」


涼気が外へ歩いていこうとすると、玲香が涼気の腕を引っ張った。


「……どうした？」


次の瞬間、玲香は涼気にキスをした。
涼気も予期していなかったことなので、動揺して目が点になっている。


「さぁ、行きましょ！」


玲香は涼気の手を引いて外へ連れ出す。


「あの女ムカつくわ！ キーーッ！」


華音が怒っていると、涼気の体から勝手に抜け出した阿母が現れた。


「あ、あんたは……」


華音が阿母に気づくとすぐに体に衝撃が走った。


「涼気は優しいからトドメは刺さなかったのね。私が代わりにお仕置しておくわ」


「キャーー！！」


阿母は魔術で華音の体に『お金しか愛せません』とタトゥーを彫り刻みつけた。


こうして華音への復讐はアクシデントを引き起こしたが、無事に終わった。