お金を置いたはいいが、なかなか機械が止まらない。


「思ったよりもたくさん収穫があったのね」


「そうみたいだな。このお金は悪人達が善良な人たちを騙して稼いでたものだから、復讐が終わったら騙された人達に返してあげたいな」


「まったく、こんな時まで優しいのね」
 

 二人が話している内に機械の計算が終わった。


「こ、こんなにあったの……?」


 機械に表示されている金額は4億5230万ピエールだった。


「これで資本金は揃ったわね。予想よりもかなり多いけど」


「たしかに。こんだけお金持ちだったら華音とはもっと違う関係だったのかな……」


「きっといつかは同じ結末を迎えていたはずよ」


「やっぱりそうかな」


 復讐の第一歩を踏み出したが、涼気の心はまだ複雑な気持ちが残っていた。







「和典さん、さっきも会ったのにどうしたの? 明日も会いに行く予定だったから急いで来なくても良かったのに」


「華音にまた会いたくなっちゃったんだよ。とりあえずドライブでもしようよ」


「うん」


 華音は助手席に座ると、コーヒーを渡された。


「これ華音の好きなカフェモカ」


「ありがとう!」


 華音はコーヒーを一口飲むと、急に強い眠気に襲われて眠ってしまった。
 






 しばらくして華音が目を覚ますと、知らない部屋にいた。


「ここはどこなの……? 和典さん!」


 呼んでも誰も来ない。
 そして部屋には物音一つしない。


「どうしよう……」


 華音は誰かに助けを求めようとスマホを探すが見つからない。


「これってもしかして、和典さんが私をはめたってこと?」


 華音は状況を整理する為に色々と思い返した。


「もし和典さんが私を騙していたとしたら、狙いは私では無いのよね。お金だって持ってるし、イケメンだし。だとしたら他に何が狙いなのかしら?」


 手足を見て縛られていないことを確認する。


「手足を縛られていないところを見ると、私はおとりみたいなものなのかしら」


 華音が考察をしていると、部屋のドアが開いて男性が入ってきた。


「和典さん……」


「俺は和典ではないんだ。そして君の予想通りおとりとしてここに連れてきた」


「一体どういうことなの?」


 華音が困惑しているともう一人男性が入ってきた。


「会長!」


「私から説明しよう。(ゆう)はもう下がっていていい」


「はい」


 和典と名乗っていた男は部屋から立ち去った。


「和典さんは夕っていう名前なんですか?」


「ああ、そうだ。君を利用するために夕に一芝居打ってもらったんだ」


「そんな……。どうして私なんですか?」


 会長は華音に近づいた。


「それは黒田をおびき寄せる為さ」


「涼気をですか? でもどうして……」


「君は知らなくていい。計画が終わったら返してあげるから、それまでは大人しくしてなさい」


 会長は部屋を後にした。