「うぅ……」


 涼気が目を覚ました。


「涼気、大丈夫?」


「うん。俺は一体どうなったんだ?」


「阿母に憑依されて気絶したのよ。2時間は眠ってたわね」


「そうだったんだ。でも俺、憑依されても何も変化起きてないよ?」


「阿母も昔はむやみに人に邪術かけてたけど、魔術界の監視委員会が目を光らせてるから復讐の時以外は悪さしないって」


 玲香は阿母との契約書を涼気に見せる。


「こんなものいつの間に……」


「涼気が気絶してる間に勝手に手が動いて書いてたのよ」


「え、それ怖いんですけど」


「とりあえず作戦練ってみようか」


「うん」


 涼気は過去の凶悪犯と体を共有していることにゾッとしているが、流れに身を任せることにした。


 なぜなら裏切られるひ弱な自分から卒業したいからだ……!


「まずはどうやって華音たちを懲らしめるかって所よね」


「さっきは貧乏だからとか恋愛経験が無いって馬鹿にしてきたから、まずはその辺りを見返したいな」


「それならまず私が恋人役をすれば良いでしょ。お金に関しては、阿母の力を借りれば早そうね」


「一体どうやって?」


「まぁ着いてきて!」


 玲香は涼気の手を引っ張ってある場所へと向かった。



「ここは……」


 涼気を玲香が訪れたのは闇市場だった。


「ここにいるのは皆悪いことしてお金を稼いでる人たちよ。この人たちからお金をちょっと拝借して見ようって訳」


「いや、でも皆怖そうな人達ばっかりだけど……」


「いいからいいから。阿母、よろしく」


 玲香は涼気を闇市場に押し込むとサッと逃げ出した。


「玲香! ちょっと待ってよ!」


 涼気が玲香の後を追おうとすると足が動かない。


「あれっ?」


 異変を感じた次の瞬間、涼気の体から竜巻が起こりあらゆるお店からお金が渦に巻かれ始めた。


 店主たちは様々な魔術でお金を取り戻そうとするが一向に竜巻は収まらない。


「おい、あいつがお金巻き上げてるそ!」


「捕まえろ!」


 闇市場の店主たちが様々な武器を持って涼気に襲いかかろうとする。


「うぉおおおおお!」


 涼気に危害を加えようとした店主はすごい力で吹き飛ばされていった。
 他にも続けて攻撃を加えようとした人た達は皆、何百キロも先の街へと吹き飛ばされて行く。


「何だあいつ。普通の能力じゃないそ!」


 店主達が身構えていると、阿母のトドメの一撃が始まった。
 店が端から勝手に燃え始めたのだ。


「おい、店が燃えちまってるぞ!」


 何としても火を消そうと店主達は焦るが一向に火は消えない。
 なぜなら阿母の得意技である灼熱炎は地獄界と繋がっており、悪人が放つ波動を焼き尽くすのである。


「店がぁあああ! 燃えちまうよぉおおお!」


 色んなところから悲鳴が聞こえる中、涼気はお金の集め退散してきた。


 商店に戻ると玲香がお札を数える機械を持って待っていた。


「おかえり。さっきはすごかったね」


「俺、どうなるかと思ってヒヤヒヤしたよ。あんな技使ったことないし」


「涼気には本当にすごい力が眠ってたんだろうね。それよりも早くお金をここに置いて」


「俺のことよりお金が大切なのかよ」


 涼気は言われるがままお金を機械に乗せた。