復讐を計画してから一週間が経った。
闇市場から巻き上げたお金は、詐欺被害にあった人や無理やり搾取された人達へ返した。


そして返金作業でバタバタしている内に、いつの間にか阿母との契約は終わった。


「そろそろ時間ね」


「うん……」


時計の針が12時を指した瞬間、涼気の鼻から阿母の姿が出てきた。


「毎回違うところから登場されますね」


「私も気分屋だから。たまには違う出方で人を驚かせたいのよ」


「なるほど」


涼気は阿母が体から完全に抜けたことにより腑抜けのようになってしまった。


「ちょっと、あんた。しっかりしなさいよ!」


阿母の声で涼気は我を取り戻した。


「あっ、はい。阿母さん、一週間ありがとうございました!」


「良いのよ。私もストレス解消できて良かった」


「俺、阿母さんがいたから強気になれたんですけどこれからはまた昔の自分に戻りそうです」


阿母は涼気の肩を叩いた。


「なに弱気なこと言ってるのよ。会長をドブに落とした時、私は力を貸してなかったわ。あれは全部あなたがやったことなのよ!」


「涼気すごいじゃん!」


玲香は感動して拍手をしている。


「お、俺がそんなことできたんですか?」


「そうよ。お爺さんには私から話しておいてあげるから、これからは好きなように生きなさいね」


「はい。ありがとうございます!」


こうして祖父の言葉を盾にしていた弱いお人好しを卒業していたことを知った。


「私はもう行くから、二人はあの日の続きでも思う存分してなさい。まったくウブな人達なんだから」


部屋が一瞬強い光に包まれた。
そして阿母は姿を消した。


「何だ自分で帰れたんじゃないの」


「考えてみれば阿母さんぐらいのレベルだと、元の場所に帰るだけの力はありそうだよな」


二人は阿母が無事に帰ってホッと落ち着いた気がした。


そして二人の目が合うと、友達以上の何かが存在することに気づいた。


「ねぇ、こないだの続きしてもいい……?」


玲香の積極的な誘いに涼気はコクンと頷いた。
二人は誰もいない商店の中で静かに2回目のキスをした。


こうして二人の関係は友情から愛情へと移り変わっていったのだったーー。(終)