今日も他愛もない会話が深夜まで続いた。間違いなく明日の僕は睡眠不足に陥るだろう。

 最近は、遅くまで電話しているためか授業中に眠ってしまうことが増えてしまった。授業中に寝ること自体は悪いことだが、僕らの学校は自称進学校のため、寝ていても授業に遅れるをとることはない。

 むしろ、退屈な授業をしていると思われる授業の方が多く感じてしまう。

 どちらかと言えば、真面目に先生の話を聞いている生徒の方が少ないのではないだろうか。もちろん、好きな教科や怖い先生の授業は起きて聞いているが、それ以外は基本的にほぼサボっているようなもの。

 彩音に関しては、完全に机に寝そべって寝ているため、僕よりも遥かにタチが悪い。

 おまけに授業終了の挨拶の時にも寝たままなんてこともザラにあるほど。

 先に寝落ちしてしまった彼女。携帯からは彼女の寝息が微かに聞こえてくる。

「・・・僕も寝ようかな」

 携帯を枕元の隣に置いて、充電ケーブルを差し込む。"ピコン"という音ともに、充電マークが緑に光だす。

 今から寝たとしても、睡眠時間は6時間にも満たないだろう。せいぜい5時間程度。

「・・・き」

 静寂になったはずの部屋から、僅かに聞こえる彼女の声。もしかして、寝たと思ったが本当はまだ寝ていなかったのだろうか。

 携帯の近くに耳を寄せ、彼女から発せられる言葉をひたすら待つ。

 1分。2分と時間が経っても聞こえてくることのない声。聞こえてくるのは、スースーという寝息のみ。

 僕の聞き間違いだったのだろうか。確かに、言葉が聞こえた気がしたのだが...

「・・・すき」

 やっぱりだ。彼女の声が携帯のスピーカーから聞こえてくる。しかし、声の声量からして起きているとは思えない。たぶん、これは彼女の寝言だろう。

「何が好きなんだろう」

 彼女に問いかけるわけでもなく、そっと口に出してしまう。一体彼女はどんな夢の中を彷徨っているのだろうか。

「ん〜・・・原くん好き・・・」

 僕の声が届いたのか。彼女からの声が返ってきた。しかし、彼女の回答は僕が思っていたものよりも予想外のものだった。

 何となくは分かっていた。彼女が僕に好意を寄せていることも、あえてその気持ちに気付かないふりをしている自分がいることにも。

 この気持ちに僕は答えてもいいのだろうか。結局このことを考えているうちに朝になってしまった。

 僕の気持ちなど分からない彼女は、すやすやと気持ち良さそうに夢の中を探検していた。