「よし、全員の手元に卒業証書があるな! 他のクラスも終わったみたいだし、うちのクラスも解散するか!」
廊下には、保護者の他に卒業証書を片手に笑顔と涙を浮かべている者たちが...
僕らもあと数分でこの学校の生徒ではなくなってしまう。教室を見渡すと、みんなの顔が懐かしく見えてくる。今日まで毎日顔を合わせていたはずなのに、途端になぜか今日までの記憶が思い出になってしまった。
「最後に先生からひとつお願いがある。最後は『さようなら』じゃなくて、『またね!』って言葉で別れよう」
僕もその意見には賛成だ。またみんなとは成長した姿で再会したい。
みんなも理解したようで、各々言葉なしに首を縦に振っていた。
「全員起立!」
先生の一声に、皆が一斉に立ち上がる。
「みんなまたな!」
「先生、またね!」
たったそれだけの短い別れの言葉。でも、それ以上に僕らは希望に満ち溢れていた。誰1人悲観しているものなどいないような清々しい顔をしていた。
普段からは想像できない大人らしい顔つきに変わり果てていたんだ。僕らはまた一段大人への階段を登った。確実に、そして大きな第一歩を。
卒業したことが名残惜しかったのか、誰も教室の外へ出ようとしていなかった。その場の空気に流されるわけでもなく、1人1人がこの瞬間を噛み締めていたんだ。
その空気を遮ったのはやはり、彼女だった。
「最後にさ、みんなで写真撮ろうよ!!」
彼女の声に感傷に浸っていた僕らの足が自然と動き出す。写真を撮るためのスペースを確保するために、机を教室の後方へと移動させる。
1年間使用してきた机は、何も荷物が入っていないのに不思議な重みがあった。
"1年間ありがとう"と心の中で呟く。次はどんな子の元に行くのだろうか。大切に使ってくれる子だったら嬉しいな。
先生を中心に男子が左側、女子が右側の形で教壇に並ぶ。女子の手には、卒業証書が握られているのに男子は誰1人卒業証書を持っている者はいない。
よく見ると、机の上にいくつもの卒業証書が置かれている。最後の最後まで僕ららしいなと思ってしまう。
「はーい、こっち向いてね。よし、じゃあ撮るよ!はい、チーズ。もう一回! はい、チーズ! よし、オッケー!」
「ありがとうございます!」
ゾロゾロと教壇を降りる僕ら。これで、本当にみんなとはお別れだ。
"ピコンッ"クラスグループに送られてきた集合写真。
「原くん。少し時間ある?」
写真を見ようと思った手が止まる。声がした方に顔を向けると、卒業証書を手に持ったままの彩音がいた。
「うん。あるけど、どうかした?」
「じゃあさ、最後に話そっか」
最後...その言葉が寂しく感じられる。僕らの進学先は異なってしまった。僕は県外の大学。彼女は県内の私立大学。
付き合っていない男女が、離れるということは別れを意味している。きっと彼女は意図して『最後』という言葉を使ったのだろう。もう僕らは出会わないことを予期して。
彼女の瞳には、将来への希望が満ちていた。僕を苦しめるのには十分すぎる眼差しだった。
彼女の描く未来に僕はいない。それを言葉なしに突き詰められている気がしたんだ。
廊下には、保護者の他に卒業証書を片手に笑顔と涙を浮かべている者たちが...
僕らもあと数分でこの学校の生徒ではなくなってしまう。教室を見渡すと、みんなの顔が懐かしく見えてくる。今日まで毎日顔を合わせていたはずなのに、途端になぜか今日までの記憶が思い出になってしまった。
「最後に先生からひとつお願いがある。最後は『さようなら』じゃなくて、『またね!』って言葉で別れよう」
僕もその意見には賛成だ。またみんなとは成長した姿で再会したい。
みんなも理解したようで、各々言葉なしに首を縦に振っていた。
「全員起立!」
先生の一声に、皆が一斉に立ち上がる。
「みんなまたな!」
「先生、またね!」
たったそれだけの短い別れの言葉。でも、それ以上に僕らは希望に満ち溢れていた。誰1人悲観しているものなどいないような清々しい顔をしていた。
普段からは想像できない大人らしい顔つきに変わり果てていたんだ。僕らはまた一段大人への階段を登った。確実に、そして大きな第一歩を。
卒業したことが名残惜しかったのか、誰も教室の外へ出ようとしていなかった。その場の空気に流されるわけでもなく、1人1人がこの瞬間を噛み締めていたんだ。
その空気を遮ったのはやはり、彼女だった。
「最後にさ、みんなで写真撮ろうよ!!」
彼女の声に感傷に浸っていた僕らの足が自然と動き出す。写真を撮るためのスペースを確保するために、机を教室の後方へと移動させる。
1年間使用してきた机は、何も荷物が入っていないのに不思議な重みがあった。
"1年間ありがとう"と心の中で呟く。次はどんな子の元に行くのだろうか。大切に使ってくれる子だったら嬉しいな。
先生を中心に男子が左側、女子が右側の形で教壇に並ぶ。女子の手には、卒業証書が握られているのに男子は誰1人卒業証書を持っている者はいない。
よく見ると、机の上にいくつもの卒業証書が置かれている。最後の最後まで僕ららしいなと思ってしまう。
「はーい、こっち向いてね。よし、じゃあ撮るよ!はい、チーズ。もう一回! はい、チーズ! よし、オッケー!」
「ありがとうございます!」
ゾロゾロと教壇を降りる僕ら。これで、本当にみんなとはお別れだ。
"ピコンッ"クラスグループに送られてきた集合写真。
「原くん。少し時間ある?」
写真を見ようと思った手が止まる。声がした方に顔を向けると、卒業証書を手に持ったままの彩音がいた。
「うん。あるけど、どうかした?」
「じゃあさ、最後に話そっか」
最後...その言葉が寂しく感じられる。僕らの進学先は異なってしまった。僕は県外の大学。彼女は県内の私立大学。
付き合っていない男女が、離れるということは別れを意味している。きっと彼女は意図して『最後』という言葉を使ったのだろう。もう僕らは出会わないことを予期して。
彼女の瞳には、将来への希望が満ちていた。僕を苦しめるのには十分すぎる眼差しだった。
彼女の描く未来に僕はいない。それを言葉なしに突き詰められている気がしたんだ。