「じゃあ、また部活で」
「また明日〜」
部活仲間と別れを告げ、自転車を走らせる。春先だが、まだ少し肌寒い。増して、自転車に乗っているとなるとその感覚は倍以上に感じてしまう。
背中には大きなラケットバッグ。通称ラケバを背負っている。テニス部には必至のアイテムと言えるだろう。
これがあるおかげで、両手が塞がらずに何本ものラケットやドリンクを簡単に持ち運ぶことができる。ただし、肩への負担は計り知れないが...
今は絶賛春休み中。有意義に休みを満喫したいところだが、春から3年生の僕らは部活動の引退も近いことから、当然のように毎日が練習。
正直疲れてはいるが、引退まで残り3ヶ月と時間が限られているので、弱音を吐いている暇はない。
今日も自転車で片道40分かかるところまで練習をしに行った。往復で1時間半。果てしなく感じられるが、意外と自転車で走り続けていればあっという間に時は過ぎ去っていく。
目の前の信号が青く点滅する。渡ろうと思えば行けるが、今はそこまで急いではいない。ブレーキを握り締め、徐々にスピードを落としていく前輪のタイヤ。
信号待ちしている間に、ポケットから携帯を取り出す。snsでも眺めようかと思っていたが、2分前にメッセージが届いていた。
送り主は、永木彩音と表示されている。彼女とは、1年間同じクラスで過ごしてきたが、異性の仲では1番仲がいいと言ってもいいくらい親しくなった。
派手すぎる外見とは裏腹に、人に対して優しさがあり、時に男勝りな部分がある彼女は友人として接しやすかった。
当然彼女も悠斗とは順調に付き合っているようで、悠斗自身も彼女が他の異性と連絡を取り合っていることに関しては寛容になったらしい。
送られてきたメッセージを開く。つい1週間前に話した内容が視界に映る。
僕がスタンプを送って終わらせた会話の下に彼女からのメッセージが綴られている。
『今日暇?』
たったそれだけの文章。彼女らしさ満開の文章に思わず、笑ってしまいそうになる。
『暇だけど、何か用でもあるの?』
瞬時につく『既読』という文字。もしかして、急ぎの内容なのだろうか。
彼女からの返信よりも先に信号が青へと変わる。ポケットに携帯をしまい、再びペダルに足を乗せて足に力を加える。
回り出すタイヤ。それと同時に、僕らの関係性もこの時からタイヤのように止まることのないものへと変わっていった。
思えば、これが僕と彼女の始まりだったのだろう。
「また明日〜」
部活仲間と別れを告げ、自転車を走らせる。春先だが、まだ少し肌寒い。増して、自転車に乗っているとなるとその感覚は倍以上に感じてしまう。
背中には大きなラケットバッグ。通称ラケバを背負っている。テニス部には必至のアイテムと言えるだろう。
これがあるおかげで、両手が塞がらずに何本ものラケットやドリンクを簡単に持ち運ぶことができる。ただし、肩への負担は計り知れないが...
今は絶賛春休み中。有意義に休みを満喫したいところだが、春から3年生の僕らは部活動の引退も近いことから、当然のように毎日が練習。
正直疲れてはいるが、引退まで残り3ヶ月と時間が限られているので、弱音を吐いている暇はない。
今日も自転車で片道40分かかるところまで練習をしに行った。往復で1時間半。果てしなく感じられるが、意外と自転車で走り続けていればあっという間に時は過ぎ去っていく。
目の前の信号が青く点滅する。渡ろうと思えば行けるが、今はそこまで急いではいない。ブレーキを握り締め、徐々にスピードを落としていく前輪のタイヤ。
信号待ちしている間に、ポケットから携帯を取り出す。snsでも眺めようかと思っていたが、2分前にメッセージが届いていた。
送り主は、永木彩音と表示されている。彼女とは、1年間同じクラスで過ごしてきたが、異性の仲では1番仲がいいと言ってもいいくらい親しくなった。
派手すぎる外見とは裏腹に、人に対して優しさがあり、時に男勝りな部分がある彼女は友人として接しやすかった。
当然彼女も悠斗とは順調に付き合っているようで、悠斗自身も彼女が他の異性と連絡を取り合っていることに関しては寛容になったらしい。
送られてきたメッセージを開く。つい1週間前に話した内容が視界に映る。
僕がスタンプを送って終わらせた会話の下に彼女からのメッセージが綴られている。
『今日暇?』
たったそれだけの文章。彼女らしさ満開の文章に思わず、笑ってしまいそうになる。
『暇だけど、何か用でもあるの?』
瞬時につく『既読』という文字。もしかして、急ぎの内容なのだろうか。
彼女からの返信よりも先に信号が青へと変わる。ポケットに携帯をしまい、再びペダルに足を乗せて足に力を加える。
回り出すタイヤ。それと同時に、僕らの関係性もこの時からタイヤのように止まることのないものへと変わっていった。
思えば、これが僕と彼女の始まりだったのだろう。