翌日の僕は、昨日のことなど忘れてしまったかのように普段通り振る舞えていた。もしかしたら、そう見えるように強がっていただけかもしれない。
これまでも数知れないほどの恋愛をし、失恋をしてきたから耐性でもついたのだろうか。
それとも、最初から諦めていた恋だったからなのか、細かい心理はわからない。
ただ彼女と顔を合わすのだけは少々気まずかった。
本来なら、彼女との連絡を断つのが正解なのはわかっている。でも、僕らは昨晩も連絡を取り合った。さすがに、電話はしなかったが、それ以外はいつも通りだった。
彼女から送られてきたメッセージに僕は、今までと変わらず返していた。
ここで、僕が彼女と関わることをやめていたら、今でも彼女のことを想い続ける日々はなかったのではないだろうか。
本当に僕はどうしようもないやつだった。それでも、彼女との連絡を断ち切るのが、僕は怖かった。彼女と関わることができなくなってしまう現実が目の前まで迫っていることが...
「おはよ」
「おはよ」
何食わぬ顔で挨拶を交わす僕ら。誰にも気付かれることなく、終わりを告げた僕の恋。
『おはよ』の3文字に挨拶以外の想いが込められていることに、僕ら以外の誰もが気付くことは出来ない。
「昨日は寝れた?」
「うん。ぐっすり寝れたよ」
「そっか。あのさ・・・」
「ごめん。急いでるからまた後で」
逃げてしまった。彼女の悲しそうに僕を見つめる顔が、不意に見えてしまった。どうして、そんなに悲しそうな顔をするんだよ。
君が選んだ結果なのに、どうして辛そうなんだよ...
僕の行き場のない想いは、行動にも表れていたようで、友達に声をかけられるまで廊下を彷徨っていた。
廊下の喧騒さえも僕の耳には届いてこないくらい、僕は1人の世界に入り込んでいたんだ。
教室に戻ると、彼女は普段通り大勢の友達に囲まれ笑っていた。僕と過ごした日々がなかったかのように...
「健大。何そこでぼーっとしてんだよ。こっちこいよ」
悠斗に呼ばれる。今でも、悠斗とは変わりなく友達で居続けている。
気分が沈んでいるからだろうか。いつもより増して、罪悪感が重くのしかかってくる。後悔したところで、友達を裏切った罪は消えることなどないのに。
「健大は頭いいからな。今日の小テストも余裕だよな」
「そんなことないけど、悠斗はやばいの?」
「んー、小テストくらいはまだ大丈夫。定期テストは、やばいかもしれないけど」
「なんとかなるでしょ。1年生の時もなんだかんだ、点は取ってたじゃん」
「ま、赤点取らないように勉強はしてたからな」
「なら、大丈夫だって」
予鈴が校内に響いた。それを合図に僕らは会話をやめ、各々の席に座り5分間の読書に取り組む。
本が好きではない僕は、1年生の頃から何度も繰り返し読んでいる小説を読む。もちろん、読んでいるふりであって、読書をする気などサラサラない。
早くこの朝読書の時間が終わってほしい。退屈で仕方がない。
何を血迷ったのか、彼女が無性に気になってしまった。左に視線を移せば、彼女の姿が僕の目に映るだろう。
両手で本を握りしめ、本を読んでいるふりをしながら彼女を見つめる。
時間にして、わずか数秒程度だった。僕が彼女を見つめるよりも先に彼女が僕のことを見ていた。
ばっちり目があってしまう僕ら。避けることもなく見つめ合う時間が永遠にも感じられる。
『好き』と彼女の口が音もなく動き、微笑む彼女。あぁ、本当にずるい。僕の気持ちなど知らないで、その言葉を投げかけてくるなんて。
そんなこと言われたら、益々僕は君を好きになってしまう。抜け出せない沼にまた足を踏み入れてしまうんだ。
気付けば、失恋したことなどすっかり忘れてしまっていた。
これまでも数知れないほどの恋愛をし、失恋をしてきたから耐性でもついたのだろうか。
それとも、最初から諦めていた恋だったからなのか、細かい心理はわからない。
ただ彼女と顔を合わすのだけは少々気まずかった。
本来なら、彼女との連絡を断つのが正解なのはわかっている。でも、僕らは昨晩も連絡を取り合った。さすがに、電話はしなかったが、それ以外はいつも通りだった。
彼女から送られてきたメッセージに僕は、今までと変わらず返していた。
ここで、僕が彼女と関わることをやめていたら、今でも彼女のことを想い続ける日々はなかったのではないだろうか。
本当に僕はどうしようもないやつだった。それでも、彼女との連絡を断ち切るのが、僕は怖かった。彼女と関わることができなくなってしまう現実が目の前まで迫っていることが...
「おはよ」
「おはよ」
何食わぬ顔で挨拶を交わす僕ら。誰にも気付かれることなく、終わりを告げた僕の恋。
『おはよ』の3文字に挨拶以外の想いが込められていることに、僕ら以外の誰もが気付くことは出来ない。
「昨日は寝れた?」
「うん。ぐっすり寝れたよ」
「そっか。あのさ・・・」
「ごめん。急いでるからまた後で」
逃げてしまった。彼女の悲しそうに僕を見つめる顔が、不意に見えてしまった。どうして、そんなに悲しそうな顔をするんだよ。
君が選んだ結果なのに、どうして辛そうなんだよ...
僕の行き場のない想いは、行動にも表れていたようで、友達に声をかけられるまで廊下を彷徨っていた。
廊下の喧騒さえも僕の耳には届いてこないくらい、僕は1人の世界に入り込んでいたんだ。
教室に戻ると、彼女は普段通り大勢の友達に囲まれ笑っていた。僕と過ごした日々がなかったかのように...
「健大。何そこでぼーっとしてんだよ。こっちこいよ」
悠斗に呼ばれる。今でも、悠斗とは変わりなく友達で居続けている。
気分が沈んでいるからだろうか。いつもより増して、罪悪感が重くのしかかってくる。後悔したところで、友達を裏切った罪は消えることなどないのに。
「健大は頭いいからな。今日の小テストも余裕だよな」
「そんなことないけど、悠斗はやばいの?」
「んー、小テストくらいはまだ大丈夫。定期テストは、やばいかもしれないけど」
「なんとかなるでしょ。1年生の時もなんだかんだ、点は取ってたじゃん」
「ま、赤点取らないように勉強はしてたからな」
「なら、大丈夫だって」
予鈴が校内に響いた。それを合図に僕らは会話をやめ、各々の席に座り5分間の読書に取り組む。
本が好きではない僕は、1年生の頃から何度も繰り返し読んでいる小説を読む。もちろん、読んでいるふりであって、読書をする気などサラサラない。
早くこの朝読書の時間が終わってほしい。退屈で仕方がない。
何を血迷ったのか、彼女が無性に気になってしまった。左に視線を移せば、彼女の姿が僕の目に映るだろう。
両手で本を握りしめ、本を読んでいるふりをしながら彼女を見つめる。
時間にして、わずか数秒程度だった。僕が彼女を見つめるよりも先に彼女が僕のことを見ていた。
ばっちり目があってしまう僕ら。避けることもなく見つめ合う時間が永遠にも感じられる。
『好き』と彼女の口が音もなく動き、微笑む彼女。あぁ、本当にずるい。僕の気持ちなど知らないで、その言葉を投げかけてくるなんて。
そんなこと言われたら、益々僕は君を好きになってしまう。抜け出せない沼にまた足を踏み入れてしまうんだ。
気付けば、失恋したことなどすっかり忘れてしまっていた。