その日から、私はオーボエに打ち込む日々が続いた。そして、三穂ちゃんと仲良くなった。
「オーボエ聴かせてよ」って、皆んなの前で声かけられた時はドキッとした。
 でも、ニコニコ笑顔で「聴かせて」って言うから、私、頑張って覚えたてのカントリーロード吹いたんだ。三穂ちゃんは、オーボエに合わせて、軽く歌ってた。トントントンと、音が楽しげに弾んだ日だった。

 去年、北海道から転校してきた三穂ちゃんは、私とは対照的にどんな事も物怖じせず思ったことをハキハキと言う。そんな事もあって、クラスではちょっと浮いてた時期もあったけど。そんな事、気にも止めない三穂ちゃんをすごいと思っていたし、その性格にも憧れていた。何といっても、裏表なく真っ直ぐ会話のできるのが嬉しかった。話のできる友達ができると、中学生活の実感が出来てきた。一つ一つの行事に迷わず、悩まずすんだから。

 そんな毎日が動き始め、あっという間に一年がすぎる。
 相変わらず私は、臆病ですぐ喋れなくなる小さな自分とバイバイ出来なくて、クラスではからかわれることが多かったし、嫌なこともあったけど。オーちゃんがいて、三穂ちゃんがいて、音楽室の片隅から鮮やかな音の世界が広がっていて。
 大丈夫。
 嫌なことがあっても、世界はどこかで輝いてること、私ちゃんと知ってるから。助けてもらって、教えてもらったから。
 だけど……
 そんな中で、ずっと心残りというか、何というか。そんな想いが一つ、心にあって。いつか、喋れなくなる自分を卒業できたら、伝えたいと思っていることがあるんだけど。
 いったいいつになることか……