帰ってくると、表でおばあちゃんがオロオロ歩きながら待っていた。
「瑠璃ちゃん。どこ行ってたの?」
「ごめんなさい」
 お母さんが、反対の道から走ってやってくる。
「この馬鹿!」
 といって肩をつかまれた。
「お母さん、心配して外探しに行ってたのよ」
 と、おばあちゃんが教えてくれる。
 お母さんは走り回ったのか、汗びっしょりになっていた。
「ごめんなさい」私は頭を下げて必死に謝った。
「どこ行ってたのよ本当に!」
「ごめんなさい」
「何があったの?」
 と詰め寄るお母さん。次の瞬間、ガバッと抱きしめられた。
「もう、本当に心配したんだからね。瑠璃、机の上に置き手紙置いてあったでしょ。ありがとうとか、ごめんなさいとかいっぱい書いてあったから、もしやって思って」
 お母さんの肩が震えていた。
「でも、良かった無事で。良かった……」
 今日花火大会で、喋れなかった時に永野くんに渡そうと思って書いた手紙の事を思い出した。そうだ、机の上に置きっぱなしだった。
「ごめんなさい。ちゃんと話す。だから、……お願いがあるの」
 お母さんとおばあちゃんに頭を下げてお願いした。



 私は、正直に全てをお母さんとおばあちゃんに包み隠さず話した。そして、自分の部屋で、お母さんとおばあちゃんに手伝ってもらい、紺瑠璃色の浴衣に着替えている。優しい桔梗の花柄も、元気を取り戻したように咲き誇った。
「ありがとう。お母さん。おばあちゃん」
「私もおばあちゃんも付いていくからね」
「うん」
「頑張んなさいよ」
 と言って、お母さんが帯をギュッと締める。
「何があっても、お母さんとおばあちゃんがいるから大丈夫だからね」
 今度は、おばあちゃんが優しく髪をまとめながら声をかけてくれる。
「うん。良く似合ってる。瑠璃色はね、おじいさんの大好きだった色。きっと、おじいさんも目を細めて見てるよ。そして、絶対守ってくれてるからね。さ、安心して行っておいで」
「うん」
 そして私はスマホで三穂ちゃんに電話をした。
「三穂ちゃん、今日はごめんね。もし来れたら来て欲しいの」