秋の終わりかそんな頃、清香先輩が言ってた"もうすぐ"な日がやってきた。


 その日はまた旧校舎の図書室での作業の日で、俺は相変わらず清香先輩の手伝いをしながら時間を過ごした。


 外は暗くなり始め、いつもなら帰る準備の時間だったけど、あともう少しで全部終わりそうで、夜の到来の早さにあれこれ文句をつけながら、後日に回すか二人で悩んでいた。


そんなときに、奴らは現れた。


 図書室の扉のところに、あの幼馴染みの男と男が好きな女子がいて。


「あの二人付き合い始めたみたいだよ」


 今日の作業の合間に唐突に聞かされていた。温度のない声で教えてれたそれは、言われてなくても解るくらいの光景だった。二人の手は、仲睦まじく繋がれてたから。


 そうして男が満面の笑みで俺たちに突然、この作業を代わると言い出した。


「ずっと押し付けててごめん。これからあと少しだけど、全部任せてくれていいからさ」


 彼女になった女子を連れて二人きりで作業をでもするつもりなのか、謝罪と一緒に二人で頷きあう。


 ……きっと、そこまで全部悪い人間じゃないんだろう。他人事ならそれなりに思えたかもしれない。けど、いつも落ち着いていて滑らかに言葉を紡ぐ清香先輩が俺の隣で呼吸を一瞬乱すものだから――


 とても腹が立った。


 自分のことは棚上げで、俺は強くそれを拒否する。


「残念ながら、ここは人目を避けていちゃつく場所じゃないんで来ないでください」


「はあ? そんなのそっちだって……」


「お前がそんなこと言うなっ!!」


「っ」


 突然声を大きくした俺に皆が黙ってしまっう。


 この男は、清香先輩の気持ちを知りながら今まで利用した。清香先輩の周りに興味のないふりをしながら観察し、そうして必要なときだけ都合よく持ち出してきた。今立ちすくんでしまった清香先輩が、どんな気持ちかもきっと。


 けどお前なんか全部じゃない。それは、悔しいが俺もだけど。


「俺にとって清香先輩は大切なお姫様みたいな人なんだよ! 困らせるようなことするわけないだろっ」


 もうこの場に居させたくなくて、俺は清香先輩の手を掴んで図書室を飛び出した。