あの時受けた神秘的な謎めいた驚きと、期待を返して欲しい。

 救いといえば、今の妻には、目の前でされていることにつついては事情が理解できない、ということが何軒も回って分かったことだ。

(――それも実に、不思議でならないことなのだが)

 いったい、何が起こっていのか。

 仲村渠は妻のぼんやりとした横顔に、どこか無垢な子供の『楽しい』という気持ちを見て取り、思わず安堵する。

(まぁ彼女が楽しそうなら、それでいいか――)

「いいですか、ナカバカリンさん!」
「うおっ!? ばっ、あ、いや違う、ナカンダカリだ」

 何もよくなかった。驚かされた仲村渠は、ひとまず素早く訂正する。

 この男は彼がアンケート用紙に名前を書いた時に、『ナカムラフクロウ』と読んだつわものである。いったい俺の名前のどこにフクロウがいるのだろう?と仲村渠は思ったものだ。

「うふふ、面白い人ねぇ」

 隣で、妻がころころと笑った。彼女は当初からこのような感じで、ずっと呑気だ。