時折気丈に振る舞っていたさっちんのお母さんだったけど、頬に涙を伝わせながらわたしに頭を下げた。


「…最期に、幸歩と友達になってくれてありがとう」


『ありがとう』と言うのは、わたしのほうだ。

わたしを閉鎖的な世界だった6畳の部屋から出る勇気を与えてくれたのは、さっちんなのだから。


さっちんの仏壇にイヤホンの片方を置き、静かに手を合わせてわたしは家へと戻ってきた。


友達が亡くなったというのに、わたしは涙が出てこなかった。


なぜなら、…これが現実だとはどうしても思えなくて。


だって、もふもふタウンのアプリを開けば、フレンド覧にさっちんがいる。

アバター名をタップすれば、さっちんの村に遊びにいくこともできる。


そこでは、アバターのさっちんがわたしを出迎えてくれる。


ほら、今だってさっちんがいる。