――わたしが取った行動。


それは、さっちんのマンションを一室一室確かめていくことだ。


さっちんの居場所のことで知っているといえば、杉浦公園のカフェから見えるマンションに住んでいるということだけ。

初めて会ったときに、さっちんがそう話していたから。


だから、このマンションのどこかにさっちんがいる。


しかし、このマンションは10階建て。

1フロアだけでも10室以上あった。


1階の101号室から訪ねていけば、どこかでさっちんの住む部屋にたどりつくことができる。

確実ではあるけど、途方もないやり方。


それに、ようやく人と関われるようになってきたとはいえ、まったく知らない赤の他人の家を1軒ずつまわるのは、わたしにとっても精神的負担だった。


できることならやりたくない。