本来なら、家からも出たくない気温。


しかしわたしは、本当に久しぶりに見る玄関から外の世界に目を輝かせていた。


暑さで、一瞬にして汗ばむ腕。

だけど、汗をかくということですら新鮮に感じて。


まるで、別世界にきたような感覚になった。


とはいっても、マンションの廊下に足音が響くと、わたしは逃げるようにしてエレベーターへと向かった。


幸い、だれとも会うこともなくマンションを出て、バスへ乗り込む。


バスは、人が集まる閉鎖的な空間。

目的地のバス停で降りない限り、この空間から抜け出すことはできない。


もちろん、他の乗客はだれも知らない赤の他人。

それでも、わたしは自分のことを見られているような妄想に駆られそうになる。


2人席で隣同士で仲よく話す年配の女性たち。

時折笑い合って楽しそう。