久しぶりにおしゃれをした。

おしゃれと言ってもメイクではなく、部屋着でない服に着替えることを指す。


いつものゆったりした部屋着を脱ぎ捨て、わたしはネイビーのマキシ丈ワンピースを着た。

中学3年生の夏に買ってもらったものだ。


不登校になってから服はほとんど買っていなかったから、今の流行りなど関係なく、わたしには今出歩ける服はこれくらいしかない。


美容院に行くこともなく長く伸びた髪をひとつにまとめる。


それだけで、鏡に映るわたしはいつものわたしとはまるで別人。


わたしにとっては、たったこれだけのことが“おしゃれ”。

だけど、久々のおしゃれが楽しくて、どこか懐かしくて。


「いってきます」


だれもいないリビングに弾むような声をかけると、わたしは家を出た。


今日は、35度超えの暑さ。