電気の消えた室内。

物音のしない空間。

靴のない玄関。


それらを確認して、やっとのことで部屋から出る。


だれもいないリビングに安心感を抱くも、殺風景なその様子にどこか虚無感を覚える。

だから毎朝、すぐにテレビをつけるのだ。


〈おはようございます。4月21日、火曜日です。今日も1日――〉


なにを見たいわけではない。

この虚無感を紛らわせるために、なにかしらの騒がしい音が必要なのだ。


ダイニングテーブルの上には、ラップのかかったハムエッグとサラダが盛られたお皿。

その隣には、【いってきます】と書かれたメモ用紙。


そのメモ用紙をゴミ箱のゴミとゴミの隙間へ落として、上から見る限りわからないようにして捨て、その足でキッチンへ。

トースターで食パンを焼き、冷蔵庫からマーガリンを取り出して再びダイニングテーブルへ。