「お願いします!」
 遥菜と亜希は、頭を下げる。
「いや、さすがにそれは無理だよ」
 グリーンクリエイティブFMの男性スタッフは困惑していた。何のアポも取らずラジオ局にやってきたものの、予想どおり出演するというのは容易ではない。
「お願いします。来週の火曜日、午後1時から数分だけでいいんです。ラジオで話す時間をください」
 亜希は食い下がった。
「あのね、そもそも12時とか1時とか各時報終わりは、ニュースをすることで決まってるの。だったら、夕方の放送のゲスト枠で出演したらどう? それならパーソナリティとトークできるよ」
「それじゃダメなんです。どうしても来週の火曜日の午後1時に出演したいんです。しかも、パーソナリティなしで。ここにいる遥菜の一人トークをさせてください」
「もう、言ってることがメチャクチャだよ。俺たちはね、遊びで放送をやってるんじゃないからな。とにかく無理。帰ってくれ」
 遥菜と亜希は、追い出された。途方に暮れる遥菜に、亜希は何かを思い付いたように話しかけてくる。
「よーし、じゃあ、作戦を立てよう」
「作戦?」
「放送部員の誇りをかけて、大勝負するよ。耳を貸して」
 亜希がヒソヒソと、作戦を伝えた。