主役であるはずのすみれはどうふるまっていいのか、まだわからずにいた。思ったよりずっと派手なパーティーに緊張で気持ちが張り詰めてしまう。
ゆるく巻かれた髪に真っ赤なイブニングドレスを纏い、ぎこちない笑みを浮かべすみれは頭を下げた。
二人は先日結納を済ませたばかりだ。結婚式は一年後の予定だった。
「すみれは心配性だから。なにかを憂いているより今この瞬間を楽しむことのほうが大切だよ」
緊張で固くなっているすみれの腰に達也が手を回し耳打ちした。すみれの内気な性格を気遣って、いつも安心させようとしてくれる。育ちの良さから来る彼のこういう鷹揚なところが、不安になりがちな自分には合っていると思う。
医師である達也と、すみれが初めて出会ったのは検査のため訪れた病院だった。
だが、偶然街中で声をかけられ交際に発展したのが半年ほど前。交際してしばらくしてから、彼の祖父が医師会代表を務める大病院の院長で、父の一番の支援者であることを知った時はいささか複雑な気持ちになったのを覚えている。