おそらくずっと前から片桐に惹かれていた。でも好きになっても報われないのだと、自分を抑えていた。
 もう自分に嘘はつけない。思いが溢れる。

「私、あなたが好きみたい」

 ぐっと顔が近づき、ふわりと唇が重なる。何度か角度を変えるうちに、互いの熱が高まっていくのがわかる。

「もうなにも考えたくない」
「それでいい」

 蓮の抱きしめる力がぐっと強くなった。

 いつかこうなることは、心のどこかで予感していた気がする。いいことだろうと悪いことであろうと、望もうと望むまいと、すみれにとって避けられない運命のように思われた。
 柔らかく何度も重なった唇が、触れた部分から熱を帯びてくる。冷え切った体が震える。

 その意味を問おうと唇を開いた瞬間、再び唇が重なった。今度は深く激しく。