手足の長いすらりとした体躯に、切れ長の目が印象的だった。誰にも媚びない意思の強さを感じる瞳は、どこか怜悧に見える。
時々父の車を運転する姿は見たことがあるが、間近で彼を見たことはない。
怖いくらい整った顔立ちは、感情をなくしたように見える。
「お嬢様」
慌てて、手で涙を拭う。こんな顔を見られるわけにはいかない。
主役の自分がパーティーを抜け出して、一人で泣いているのを見られたらどう思われるだろう。
「どうぞ」
ハンカチを渡され、パーティーバッグを忘れてきたことに気づく。
「ごめんなさい。みっともないところを見せて」
「あそこは気詰まりでしょう」
「え?」