しばらく来客と談笑したりしているうちに、テーブルに食事が運ばれてきた。緊張のせいか食欲がわかなかった。

「すみれ、顔色が悪い。少し休んでいいよ。僕がお客さんと話してるから」
「そんな、大丈夫だから」
「君は体が弱いんだから、無理しちゃだめだよ」

 強く言われ、確かに少し眩暈がしていた。ただの人酔いだ。

 達也の言葉に甘え、冷たい水を飲んでから手洗いに立った。
 半分空いた扉から女性の声がする。すみれの同僚二人が化粧室にいるようだった。

「宝来さんって、ほんとにすごい家の人だったんだね。びっくりしちゃった。たかが婚約でこんなにすごいパーティーするなんて」
「そりゃそうよ! 相手もどこだかの御曹司でしょ? そりゃ宝来さんに仕事もいくわよね」
「会社だとおとなしいからビックリだわ。高そうな指輪ひけらかしちゃってお金持ちって悪趣味だよねぇ」