みながスマートフォンやカメラを向け、フラッシュが一斉に光る。
 タイミングよく、窓の向こうで花火が打ち上げられた。

 こんなに早く盛大に婚約パーティーを行う必要があるのか、はなはだ疑問ではあったが、口を挟む余地はなかった。

 「早く落ち着いて自分の理想の家庭を築きたい」という達也の言葉に促され、あっという間に結婚が決まった。
 
本音を言えば、もう少し仕事に専念したい気持ちもあったが、幼い頃に母を亡くしたすみれもまた家庭というものに幻想めいた憧れをもっていた。

 父が満足するであろう結婚相手を見つけたことで、どこかしらほっとした自分がいた。

 食事が運ばれると、二人のところに知人が祝いの言葉を述べにやってきた。

「結婚式はいつ?」
「来年です」
「へぇ。もうこれが結婚式かってくらい豪華だけどな」
「宝来さん、おめでとう」

 すみれの会社の同僚数人もやってきた。

「お忙しいところありがとうございます」
「すっごく素敵な方と結婚するのね。羨ましい」