複雑に入り組んだ利権とそれぞれの思惑。
 だがしかし、二人をつなぐものは、単純な愛情であってほしい。そうあるべきだ。
達也の言うとおり、そんなことは忘れてただ幸せな未来を夢見て微笑んでいるのが幸せかもしれない。


「では、ここでお二人の婚約指輪を披露してもらいましょう!」

 司会が明るい声で会場に呼びかける。
 その言葉に驚く。もともと細かい進行については聞かされていない。大切な指輪を見せびらかすようで気がひけた。
 司会から立ち上がるよう呼びかけられ、おずおずと立ち上がる。

 ──まるで見世物にでもなったみたい。

 皆が拍手し、喝采する中、達也がすみれの前に跪き、その薬指に2カラットのダイアモンドの指輪をはめるのをどこか他人事のように、実感のないまますみれは見つめていた。