生まれつき心疾患があり、家にいることが多かったすみれは必然的に内向的な性格になった。
 そのせいか、父がすみれに期待することはなかったが、却ってそのせいですみれは必要以上に人の顔色を窺うようになってしまった。
 
「君は今夜の主役なんだから、堂々と微笑んでいるだけでいいんだよ」

 でも、と言いかけて、すみれは口をつぐんだ。このお金の出どころは、達也の実家であるはずだ。

『宝来家と上條家、権力と富の結婚』

週刊誌の見出しが頭によぎった。
 政治にはお金がかかる。達也の実家がこうした場を提供するのも、未来の花嫁であるすみれを喜ばせるためでは決してない。