秋色のふたりは恋で強くなる。



秋色が深まっていくたびに、
私たちは迷いを強め、
友達以上恋人未満を抜け出すことができない。

イチョウ並木の下で
君は午後の日差しに照らされ、
黄色に輝いている。

君に感じた気持ちは確かだと思うし、
もし、できるなら、
君の心の傷や、
君の過去をもっと知りたい。

だから、覚悟を決めて、
君の名前を静かに呼ぶと、
君が優しく微笑んでくれたから、
言いたかったことがすべて吹き飛んでしまった。





メビウスの輪をヘアバンドで作った。

テーブルに宇宙ができた瞬間、
彗星が最接近するニュースが流れた。

オレンジジュースを飲んで、
何も考えないで輪を見る。

今、目の前に
飛び込む情報に
惑わされて、
興味もないのに
星を探しに行きたくなった。

もう少しだけ、
流されない軸が欲しい。






終わった夏が忘れられず、
砂浜を歩いている。

ビーチハウスはとっくに壊されて
はしゃいだあの夏はもう終わっていた。

君と駆け抜けた波打ち際、
穏やかな波が砂をさらっていく。

冷たい風。
遠くでなびくすすき。
高くなった透明な空。

過去が流れて、
涙が止まらない。

君はどこへ行ったの?






ガランとした駅の中は
ほのかにコンクリートの冷たさがある。
電車を待つのは、
青いプラスチックのベンチに座る
君と僕だけだった。

「連れて行ってほしい」
「どこへ?」
「どこかに。そんな気分なの」

君は改札を見て、
真剣そうに訴えた。

君の表情は
夏が終わったかのように
寂しかった。






雨で黒いコンクリートに
街灯が白く反射している。

死にたくなったから、
雨に打たれて
歩いている。

日曜日のこんな時間だから、
雨粒が草や木々にあたる音がする。

おだやかな雨は
なんでこんなに愛があるのだろう。

昨日までを洗い流してほしい。
と願ったら、
熱い涙が止まらなくなった。






大型旅客機が
轟音を立て
夜空に赤白を点滅させ
頭上を飛んでいった。

公園をランニングしている。
涼しい風を背に受け
呼吸を一定にする。

いくつもの白い街灯をくぐり
ゆるいカーブを駆け抜ける。

もっと、スマートでありたい。
だけど、そうあれない。
だから、弱いんだよ。

息が切れた。





「調子悪い日は、大人しくしたらいいよ」

そう言って、
君はマグカップを手元に置いた。
コーヒーの香りが立ち、
香ばしい甘さが空気を凛とさせた。

頭がまわらないけど
グズだと思わないで欲しい。
そう思い、
コーヒーを一口飲んだ。

礼を言うと、
君は微笑み、
そっと部屋を出ていった。





深くなった緑のゆらめきを
バルコニーから眺めている。

煙草がもうすぐ燃え尽きそうだ。
フィルターぎりぎりまで
吸うのは身体に良くないけど
そのまま吸っていたい気分なんだよ。

先なんてわからないから
今を生きるだけだけど
たまに辛くなる。

吸い終わってすぐ、
遠くで踏切が鳴り始めた。






電車の中は弱冷で機械的な清涼を浴びている。

ないものねだるのって、
解散したバンドの新曲を期待するみたいだ。

寒がりな君は
弱冷房車を選ぶことを思い出した。

寂しさ隠すのって、
二度と会えない君に期待するみたいだ。

戻れないから、
イヤホンでこの曲、聴いているんだよ。





秋雨がガラスを打ち付けている。
日が短くなったから
すでに街灯が目立ち始めている。

カフェの中は変わらず大人しくざわついている。
Mac bookの画面は何も変わらず、
コーヒーだけが減っていた。

別に好きで大人やってるワケじゃないんだよ。

キーボードで打ち込んだ後、
deleteを連打した。




ホームで新幹線のガラス越しに手と手を合せた。
君は目で何かを訴えていた。

発車ベルが鳴ったから、
僕はそっと手を離した。

あの時、小指と小指で誓ったことや
これまでのことが夢になるのは、
炭酸が徐々に抜けるようなものだ。

新幹線がゆっくり動き出した時、
君は小さく手を振った。





冷たい雨に打たれた。
今日もずぶ濡れで玄関の電気をつけた。

ぶどうの美味しい季節に
なぜか、馴染めなくて、
毎日が憂鬱で締め付けられる。

秒針が常に回り
気持ちだけが置き去りにされる。

この世界は、
寄り添うだけで十分なはずなのに。

実際は殺伐としている。
時間がないのはなぜ?





夜のベイエリアは波の音が響き、
オレンジの街灯がファンタジーを作っていた。

ショートボブが踊るくらい
駆け抜ける君は、最強にやんちゃだね。

大きな声で君を呼んだら、
君は振り向き僕を手招きした。

だから僕も君の仕草を真似して
君を手招きしたら、

「もう」と言う声が響いた。





電球色したオープンテラスで
君と飲んでいる。
少し冷たい風が心地よかった。

「出会ってもう、3ヶ月経つね」って君は言った。
君はカルアミルクでもう、赤かった。

ソルティドッグを飲み干したあと
夏はもう終わってたなと思いながら、
グラスを置いた。

「ねえ、最高だね」って君は静かにそう言った。





青白い摩天楼を縫うように
張り巡らされたオレンジの高速は
スムーズで快適だった。

湾岸方面へ抜けようとしている。
君の乗る最終便に間に合いそうだ。

右カーブのあと、
ボトルホルダーから
缶コーヒーを取り、
一口飲むといつもの泥みたいな味がした。

一瞬でも早く君に会いたいと思った。





本屋で思いっきり息を吸い込む。
インクとコーヒーが混じっている。

9月はいつも自分を見失う。

だから、こうして、
膨大な書籍の中から
手当り次第、自分が求めている文を探す。

本屋は穏やかすぎて、
たまに死にたくなる。

だけど、それがいい。
迷っちまえば気が晴れるはずだ。





日曜日の夜、
アーケードはシャッターの前で踊る人と
ギターで弾き語りをする人しか
盛り上がっていなかった。

そんな人達の前を横目に歩きながら、
あなたとの約束を
一つ破ったことを思い出した。

あのとき、
あなたのことをしっかり見て、
もっと心を開いていたら
どうなっていただろう?





すすきが夕日で輝いている
君はそれをプリズムと言った

ストロベリーパフェのような
凛々しさとあどけなさが、
君は最強でレベチだね

5時のチャイムのような
寂しさとやるせなさが、
君と離れたくない理由なんだよ

君が求めているのなら、
無くした捜し物みたいに
綺麗にワープして消えてやる。





雨の水曜日にさよならを告げる。
深夜の公園は雨がしとしと降っていて、
水瓶の中のように暗く湿っていた。

雨の夜中にさよならを告げたい。

深夜の公園は自問自答に最適で、
ここで未来を決めては
明るい希望を作る。

どうして生きるのって、
こんなに面倒なんだろう。

頬に雨粒があたった。





秋の日差しでイエローゴールドが薬指で輝いている。

白い太陽に手をかざし、おもいっきり呼吸をする。
手を動かすたびにメビウスが乱反射して
夢のような導きを与えてくれる。

今は忘れたい。

恋のこととか、
今後のこととか。

iPhoneで収める瞬間より、
今、この瞬間の光を集め続けたい。





木々が色づき始め、
冷たい風で季節が進む。
燃えるような夕日であなたとの影は長くなる。

あなたとの夏の思い出は、
ベースラインをなぞるように遠のいていく。

レモンのように爽やかに溶ける気持ちは
忘れないようにしたい。

ただ、手を繋ぐだけでいい。
そう思えるような夕焼けだった。





コスモス柄のワンピなんて
子供っぽいかなって思ったけど、
思いっきって着たら、
私は鏡越しで秋になった。

秋の朝日が最高の一日になることを教えてくれていた。

iPhoneに君からの通知が来た。
それだけで胸が高鳴る。

これからのあなたとの時間が
最高にロマンティックになる予感がした。





涼しくなった公園で二人で話している。
時間は簡単に溶け、
夕闇は夜になっていた。

手を繋いで悔しい気持ちを
聞いてくれる君は死にたい甘さすら、
包めるくらい優しかった。

二人で座るベンチは、
スポットライトのように街灯に照らされている。

君の手を強く握ったあと頬に涙が伝った。





秋雨が空想を曇らせる。
冷たさが切なさを作る。

自問する帰り道
責める声が脳内で反響する。

ビニール傘の下は雨音が鈍く響いている。

もし、過去に行けるなら、
臆病を超えたい。

このまま沈むように
青く深いところまで連れて行ってくれない?

そしたら、答えが見つかる気がするから。





自由になりたいから、
真夜中のコンビニで、
濃厚バニラといちごパフェとモンブランをかごに入れた。

時計の針は回る。
すでに頭の中は鐘が鳴る。

今日も上手く行かなかったことを
忘れ去るために自分に魔法をかけたい。

最高にとろける甘さの向こうにある
明日の現実を思うと、
ため息が出た。





窓の外に広がる週末の繁華街は
ネオン色で宇宙を作っている。

今日も通勤電車は
疲れ切った人たちを規則正しく運んでいる。

眠い目をこすり、
「愛している」と打ち込んだ。

それを一息おいて送信した。

君はいつも夢で会えないから、
君への思いが溢れ出てくる。

明日会う君になんて言おうかな。





起きたら君がいないみたいに
秋雨が街を灰色にしていた。

起きてコーヒーを淹れた。
昨日、閉店前のパン屋で買った
クロワッサンと一緒にデスクに持っていく。

iMacを起動し、
クロワッサンを食べる。
低血糖で見た夢は、
一人で箱の中に閉じ込められていた。

しぶきが窓を溶かすように濡れていた。





公園の並木道を自転車でくぐる。
木々はいつのまに黄色になり始めていた。

こないだ振られたことを思い出すほど、
風は冷たかった。

淡い日差し。
木陰のベンチ。
空を写す水面。

すべてが優しく暖かい色をしてる。

かごのかばんが揺れる。
お守り代わりのテディベアが
微笑んでいる気がした。





「なんとかなるでしょ」と
君は笑いながらそう言った。

右手を目一杯に伸ばし、
かすみ雲を手にしようとした。
空は日に日に高くなり、
季節はどんどん深まっていく。

思いは空想に。
真実は理想に。
未来は夢想に。

どんなに未来が暗くても、
手をつなぎあって、
君と乗り越える勇気があればいいと思った。





熱々のコーヒーを飲んで
夜の街を眺めている。

駅前通りを歩く人たちは
みんな長袖を着ていて街は秋色になっていた。

1日中考えすぎて
熱くなった頭を冷ますカフェインは最高だ。

もう二度と叶わないことを
諦めるには、まだ割り切れてない。

あのときの熱い涙は素直な証だと、
ふと思った。






「なにそれ面白い」
君はそう言ったあと、
ファジーネーブルを一口飲んだ。

君はいつも通りだ。

週末の夜、
今日も雨が降っていて
窓越しの世界を冷たく染めていた。

シックな暗さと気持ちよさそうに、
酔った君の顔を見ているだけで、
幸福度が上がる。

でも、よかった。
君と仲直り出来て。





離れない約束はすでに無効で、
そんなことは忘れて
ぼやけた毎日を過ごしている。

そんな昔の誓いを思い出したのは、
夜の公園で自販機で缶コーヒーを買ったときだった。

タイムラインは止まったままで、
あなたとは、
お互い忙しくて、
交わる気配は微塵もない。

今更、後悔したって遅いね。





横断歩道の真ん中で一気に冷たくなった風に吹かれた。
薄着したことを少し後悔した。

交差点を行き交う人達は
優しくなった秋の日差しに目もくれず、
忙しくどこかへ向かっている。

今の悩みなんて
そっちのけにして、
毎日をこなす強さは必要だけど、

もう少し、
ラフな生き方がしたい。





死にたいときはいつも深夜で
思い上がった過去が殺しにかかる。

深夜の学校の中で、
青く照らされる蛇口をひねるように、
やり場の無い気持ちを孤独に流すよ。

この思いは、
誰かにかまってほしくて、
銃口をこめかみに当てるようなものだ。

なぜ、涙はこうも
無限に湧いてくるんだろう。





通り雨が冷たい世界を作った。

ビニール傘で空中に魔法陣を描いても
何も起きることはなく、
白の街灯が傘からの水滴を
白く反射した。

君がいない夜は特別な物語が、
始まるわけではないのはわかっている。

砂糖を溶かすように悲しくなるけど、
いつだって、
大丈夫だって、
言ってほしい。





夜の路地は街灯の弱い光で照らされている。

立ち止まり、白い満月に手をかざした。
指の間から漏れる光は妙に幻想的だった。

傷つきやすいから
無頓着で強靭なハートをください。

そう願った。

別に何も起きないけど、
身体が軽くなった気がした。

白けた空気に蹴りを入れたくなった。





摩天楼を見上げると、
端々が赤く点滅していた。

あのタワーから身を投げ出すことは簡単だけど、
痛みに耐えるのは簡単ではない。

そういうものだ。

たがら、仕方なく今日も必死なふりするけど、
孤独感はまぎれない。

大切なことは、
すでにわからないけど、
矛盾も取り消せる魔法をください。





連日、降り続く雨が秋を深めていく。

カフェから交差点を見渡す。
多くの人達が傘を差し、
目的の場所まで通り抜ける。

肩を叩かれて、
振り向くと君が
「おまたせ」と言った。

「待ちくたびれた」と言ったら
「ごめん」と君は笑って謝った。

隣の席に座った君との時間は尊い。
と思った。





秋の半ばの銀杏並木道をあなたは駆け抜けていく。
そして振り返り、僕を手招きした。

あなたは木漏れ日に照らされていた。

カーキのアウターに黄色のスカートが、
なぜこんなにも似合うのだろうと強く思った。

もし、今、
僕が駆け寄って、
あなたを抱きしめたら、
どんな表情をするだろう?





秋になると君のことを思い出す。

幸せなファンタジーは
突然、起きることをウォルトが教えてくれた。

だけど、いつも恋はすれ違う。

雨に打たれるタイミングと同じようなズレが多い。

嘘がたとえ小さくても、
本来の自分ではないからタイムラインは離れていく。

さよなら、青い思い出。





マイナスなことなんて霧吹きで吹き飛ばそう。
うつつ抜かす暇はない。

核心を割って拾ろう。
イチョウ葉をつまむように優しくね。

黄色にシケた思いは
虚ろな社会を蹴りたいだけだ。

順応できず大人になった。
普通じゃなくて嫌気がさすね。

激烈な鬱を吹きとばせ、
撃つ、宿敵は己の内。





街路樹が色づき、
日差しが黄色い昼下がり、
あなたと黙々と手をつないで歩いている。

季節は冬に向かって
移動している最中だけど、
あなたへの気持ちは変わらない。

別に行く宛なんてないけど
もどかしさなんてない。

このまま、
ただ、時間が流れればいい。
それだけで非日常になるから。





モヒートを飲みきった。
週末のときめきは君が作り上げている。

酔いが回り、
より優しくなった君に
なぜ、引き込まれるんだろう。

会えない日々はたまらなく寂しかった。
今日はただ、
それを君に伝えたかった。

「このままだったらいいのに」

君はグラスを空にして
ぽつりとそう言った。





いつもすれ違う。

その日に出来ることは
多くないから愛の言葉を
照れずに言える人はすごいと思う。

すれ違いは神様の芸術で
人為的ではないことを
誰かに証明してほしい。

取り繕うのは簡単だ。

トカゲに鱗を張り付けて
ドラゴンを飼っていると言い張った
ダヴィンチの逸話を思い出した。





【初出】
 秋色のふたりは恋で強くなる。
 新規書き下ろし 2023.10.14 

 蜃気羊Twitter(@shinkiyoh)
 https://twitter.com/shinkiyoh
 2021.9.1~10.31