「どうしたんですか?」

 都丸くんと初めて会話をした、翌日の朝のこと。

 下駄箱を開けた直後に固まったわたしの顔を、ホウキを携えた彼が覗く。

「なんですか、それ。手紙……?」

 差出人不明の手紙が、その日からわたしの下駄箱に入れられるようになったのだ。

 四つ折りに畳まれた、シンプルな便箋。上履きの上にちょこんと乗っていたそれを手に取り開いてみると、そこにはこんな文章が書かれていた。

『近藤先輩の昨日のシュート、とてもかっこよかったです!近藤先輩だったら絶対にプロバスケット選手になれます!』

 正直言って、すごく驚いた。
 わたしのことをこんな風に思ってくれている後輩が、バスケ部にいるなんて。

 手紙を胸にあてて、噛み締めるようにぎゅっと握る。図らずとも、顔が綻ぶ。

 そんなわたしの真横にいた都丸くんからは、その緩んだ横顔と手紙の内容が見えたのだろう。

「近藤先輩のプロバスケ選手姿、いいですね。応援してます」

 と言った彼に、わたしははにかみながら「ありがとう」と告げた。