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 あ、今日も入ってる。

 都丸くんに想いを伝えたあの日から、わたしの下駄箱の中にはまた、毎日手紙が入るようになった。

 毎日、と言っても、三月の初旬から再開された手紙だから、受け取ったのはほんの数通で、それも今回でおしまいだけれど。

 だってわたしは、今日この学校を卒業するから。

 いつもの如く四つ折りで、上履きの上にちょこんと乗っている便箋。だけど今日のは普段と違ってシンプルなものじゃなく、桜の花びらのイラストがあしらわれた、卒業式特別バージョンだった。

 ドキドキしながら、そっと開く。
 わたしはこの瞬間が、大好き。

『近藤先輩、ご卒業おめでとうございます。今まで本当に、ありがとうございました』

 達筆な都丸くんが利き手で書いた文字は、とても美しくて、見惚れるほどに綺麗。
 卒業式特別バージョンの手紙は、いつもより少しだけ、長い文章。

『今日はひとつ、お願いごとがあります。近藤先輩が卒業したら、僕は近藤先輩のことを下の名前で呼びたいので、どうか教えてください』

 サッサ サッサ

 読み終えて、わたしは後ろでするホウキの音に振り向く。

 目が合って、音が止んで。
 どちらからともなく、手を繋いだ。

「わたしの名前は叶希(とき)だよ。願いが叶うの『叶』に、希望の『希』」

 そう言うと、フライングで「叶希ちゃん」と呼ばれて、ものすごく照れた。

 明日は都丸くんとの初デート。
 わたしもその時には、彼のことをまことくんって呼ぼうかな。