丁寧に頭を下げた彼女に続いて、傍に並んでいた後輩たちも礼をした。
 感謝の意が、伝わってくる。

「近藤先輩が教えてくれたこと、本当は正しかったんだって、実はもっと前から気付いていました……わたしたちはみんな段々と、熱心な近藤先輩のことが大好きになっていきました。だけどみんな、最初に反抗しちゃった手前素直になれなくて……近藤先輩にわざと聞こえるように言っちゃった悪口を、取り消す方法がわからなくて……謝罪と感謝を伝えるのが、こんなにも遅くなってごめんなさい。部活の帰り際によく、学校の玄関で反省会を開いたりもしてたんですけど、なかなか近藤先輩のところに謝りに行けなくって……」

 学校の玄関。

 たったそれだけのワードで思い出すのは、都丸くんのこと。

 わたしが部長になってから、彼がずっとくれていたうそつきレター。バスケ部員に成りすまし、寄越してきたメッセージ。

 ぐすんと目に涙を浮かべた彼女を見て、わたしの胸は温かくなる。この胸の温かさは、手紙を読んだ時に感じたものとよく似ていた。

「ありがとう、みんな」

 こんなわたしに、素敵なはなむけの言葉をくれて。

「わたしもみんなのこと、大好きだったよ」

 ナーバスな気持ちで臨んだ送別会は、高校生活の思い出アルバムの中、貴重な一ページとして刻まれた。