達筆の都丸くん。だからあの手紙はきっと、正体がバレないように利き手じゃない方で書いたんだろうなあ。

 なんてことを、しぶとくいつまでもうじうじと考えていた二月下旬。
 卒業までは後少し。部活の送別会が開かれた。

 体育館。
 久々に顔を合わせる後輩たちに、いくらかナーバスになっていく。

 鈴木ちゃんくらいしか、わたしは仲良くなれなかったから、最後のスピーチは、鈴木ちゃんにしてほしいな。

 この会が去年と同じ流れで進行するならば、締めくくりは三年生それぞれへ、後輩の代表ひとりずつから祝辞が送られることになっている。

 緊張しながら、回ってきたその順番。
 わたしの前でマイクを持ったのは、なんとわたしのことを、陰で悪く言っていた後輩のうちのひとりだった。

「近藤先輩はいつも厳しくて、鬼みたいで大嫌いでした」

 彼女のひとこと目で、ざわめくまわり。
 わたしの胸はズキンと痛む。

「ちょっと」とわたしと同学年の子が止めに入ろうとしたけれど、彼女はすぐに、続きを話す。

「最初の頃、わたしたち後輩にはほとんどボールに触らせてくれなかったし、走れ走れって言って、すぐにグラウンドに追い出されるしで、腹が立ったことが何度もありました。だけど今、わたしたちが他校のチームにスタミナ負けしなかったり、スピードで勝つことができるのは、あの頃の近藤先輩の厳しさがあったからだと思っています。本当に、ありがとうございました」