なんと言う慌て具合なのだろう、と思った。

 そんなにキョドっちゃってばかみたい、だなんて、都丸くんに対して初めて醜い感情を持った。

 とことん問い詰めてやりたかったけれど、ここは学校の玄関で、先生や生徒皆が行き交う場所。

「どうしたの、近藤さんたち。なにを揉めているの?」

 と、通りがかりの先生に心配されてしまえば、わたしたちは「なんでもないです」と、その場を収める以外他にない。

 朝のホームルームの始まりを告げる予鈴が鳴るまでは、玄関掃除をするであろう美化委員の都丸くん。
 そんな彼に背を向けて、わたしは自分の下駄箱まで歩を進める。

 蓋を開ければ見えた手紙だけれど、今日は嬉しくも何ともなかった。

 読みもせず、それをスカートのポケットに突っ込んだ。そのまま教室へと向かって行く間に拭った涙は、その後一時間目が始まっても、時折わたしの頬を濡らしていった。

 都丸くんのばかばかばか。うそつきっ……