部長になった矢先、張り切りすぎて、後輩みんなに嫌われたと思っていた。
 でもそんな中で、唯一優しい言葉をかけてくれる人がいた。それはこの、手紙の差出人。

 毎日欠かさずわたしの下駄箱に四つ折りの便箋を入れてくれる、まめで優しい人。

『今日も近藤先輩の指導、楽しみにしています!』

『近藤先輩のディフェンスの教え方、じょうずですごく好きです!』

『近藤先輩の一生懸命な姿を見ていると、わたしもやる気が出てきます!』

 今までもらった数々のメッセージを思い出し、うそだったじゃん、と思ってしまう。
 わたしの胸を温めてくれた言葉たちの全ては、バスケ部の一員を装った都丸くんが偽りで並べた言葉だったじゃないかと。

 わたしに延々と手紙を寄越し続けて、そして毎朝それを読むわたしの反応を横目で眺めて、都丸くんは楽しんでいたの……?

 思い込んでしまったら、堪えていた涙がぽたんと落ちていった。

「都丸くんの、うそつきっ……」

 そう言うと、都丸くんが青ざめた。
 青白い顔をずいと、面前に近付けてくる。

「ち、違うんです近藤先輩!これは、その、なんて言うか……と、とにかくうそじゃないんです!」