「え!こ、近藤先輩!?ど、どうしてそんなとこに!」

 素っ頓狂な声を上げて、仰天する都丸くん。それもそのはず、無理もない。
 だって普通、朝からこんなところで屈んで隠れんぼをしている人なんて、いないもの。

「お、おはようございます近藤先輩……」

 まるで幽霊でも招き入れるかの如く、恐る恐る内側から扉を開錠した都丸くんは、うかがうようにしてわたしの顔を見下ろしていた。

 気まずそうな目と視線がかち合い、わたしはおもむろに立ち上がる。

「なんでよ、都丸くん……」

 長時間しゃがみ込んでいたせいで、わたしの足は痺れていた。

「なんで都丸くんが、わたしの下駄箱に手紙を……」

 だけど痺れた足なんて、ちっとも気にはなりやしない。
 何故なら今のわたしが気になっていることは、これだけだったから。

「どうして都丸くんが、手紙の差出人なのっ……」

 潤んでいく瞳。
 目の前の都丸くんが滲んで見える。

 なんだかとても、複雑な心境になってしまった。嬉しいのか悲しいのか、自分でもどっちなのかわからなかった。

 一歩足を踏み出して、校舎の中へと身体を入れた。わたしの腿の横では、震える拳が作られた。

 なんで都丸くんが、手紙の差出人なの。わたしはバスケ部の後輩からの手紙だって、ずっと信じて疑わなかったのに。

 そう思ったら、悲しくなった。