「僕、全然真面目くんじゃないですけどね。美化委員になったのも、不純な動機ですし」

 と、都丸くんは謙遜して、再びホウキを持つ手を動かし始める。

 そんな彼の姿を目に、わたしは少し寂しく感じた。

 都丸くんとも、もうそろそろバイバイなんだよなあ……

 高校を卒業したら、都丸くんとはもう二度と会えない気がした。彼とはクラスメイトでも友人でもなければ、地元が一緒のわけでもないから。

 サッサ サッサ

 そんな音を耳にして、開ける下駄箱。すると今日も今日とて入っていた四つ折りの手紙が見えて、それを広げた。

『毎日放課後が待ち遠しいです。引退まで残り僅かな時間、少しでも長く近藤先輩とバスケがしたいです』

 しんみりとした気分で読んだからか、瞳に薄らと涙が滲んだ。

 わたしだって、この子と少しでも長くバスケがしたいと切に思った。
 差出人がわからないまま卒業なんて、絶対にしちゃだめだと思った。

 だってこの手紙がなかったら、今のわたしは存在しないのだから。

 この子の正体を突き止める方法をしばし悩み、わたしはとある手段を思い付く。

『わたしが部長になってから、ずっとわたしへ手紙をくれていたあなたは誰ですか。もし良かったら、名前を教えてください』

 数日後の下校の時。わたしは自分の上履きの上へ、手紙を残して帰ることにした。