「都丸くんって、絵が上手なんだね」
とある日の朝、玄関の壁沿い。
『校内美化にご協力ください』のポスターの前で、わたしの足はふと止まった。
「しかも、すっごく達筆だし」
まるで美術の教科書に載っているような絵と、まるで習字の教科書に載っているような文字に、わたしの口からは感嘆の溜め息が漏れていく。
サッサと掃き掃除をしていた都丸くんが、その音を止めて、わたしの隣までやって来た。
「どうしてこれが、僕の描いた絵だって思うんですか?」
「だってここに、『M・T』って書いてあるもん」
とんとんと、人差し指で突つくポスターの端。「これって都丸まことのイニシャルでしょ?」と聞くと、彼は白目を広げていた。
「近藤先輩、僕の下の名前知ってたんですね。僕は先輩の下の名前、知らないのに」
「知ってる知ってる。だって都丸くん、有名だもん」
「有名?」
「毎朝毎放課後掃除に励んでいる真面目くんがいるって、みんな言ってるよ」
本当は、『真面目くん』の部分が『イケメンくん』なのだけれど、それは内緒にしておいた。
イケメンにイケメンって伝えるのは照れちゃうからって、そんなちっぽけな理由で。
とある日の朝、玄関の壁沿い。
『校内美化にご協力ください』のポスターの前で、わたしの足はふと止まった。
「しかも、すっごく達筆だし」
まるで美術の教科書に載っているような絵と、まるで習字の教科書に載っているような文字に、わたしの口からは感嘆の溜め息が漏れていく。
サッサと掃き掃除をしていた都丸くんが、その音を止めて、わたしの隣までやって来た。
「どうしてこれが、僕の描いた絵だって思うんですか?」
「だってここに、『M・T』って書いてあるもん」
とんとんと、人差し指で突つくポスターの端。「これって都丸まことのイニシャルでしょ?」と聞くと、彼は白目を広げていた。
「近藤先輩、僕の下の名前知ってたんですね。僕は先輩の下の名前、知らないのに」
「知ってる知ってる。だって都丸くん、有名だもん」
「有名?」
「毎朝毎放課後掃除に励んでいる真面目くんがいるって、みんな言ってるよ」
本当は、『真面目くん』の部分が『イケメンくん』なのだけれど、それは内緒にしておいた。
イケメンにイケメンって伝えるのは照れちゃうからって、そんなちっぽけな理由で。