「それじゃ、行ってくるね〜」
「お弁当は持った?」
「持ったよ。母さん、今日って夜勤だっけ?」
「そうよ。ごめんね、今日は1人になっちゃうけど、ご飯はちゃんと準備しておくから」
「大丈夫だよ。僕はもう18歳だし、それより母さんこそ体調気をつけるんだよ。もう若くはないんだからさ」
当然だが、母の顔には年々皺が刻み込まれている。母は同年代の親に比べると若く見えるが、あくまでもそれは外見。体の内部は、年相応になっているのだから、無理だけはしないでほしい。
「そしたら、玲に面倒みてもらおーっと!」
「はいはい。行ってきます」
「行ってらっしゃい!」
笑顔で見送る母の姿。母の笑顔を見るだけで不思議と元気が湧いてくる。それくらい僕にとって母の笑顔は、欠かせない存在にまでなってしまったらしい。
あの日見た母の涙は、あれ以来見てはいないが、今も人知れず泣いているのだと思ってしまうと心が締め付けられる。
もうすぐで父の命日が近づいている。きっと母もそのことを考えているだろうな。
時間が経ったことで、僕自身泣くことはなくなったが、父との思い出が薄れることはなかった。それは母も同じだろう。
僕よりも長い時間父と寄り添ってきた母も同じ想いなはず。
父さんは僕らの思い出の中で、生き続けている。僕らが忘れない限り永遠と父さんが消えてしまうことはないんだ。
僕の口から吐き出される息が、白く水蒸気のように宙へ舞う。
雲で覆い尽くされる空からは、真っ白な結晶が地に降り注ぐ。
止まることを知らずに永遠とも思えるくらい、何度も何度も僕の額を濡らしていく。
家を出てから10分が経過した。高校までは歩いて20分と比較的近い方なので、天候を問わず普段から歩いて登校している。
10分という短い時間でも空は大きく変化する。先ほどまでの雪が嘘だったかのように、倍以上の勢いで雪が降ってくる。
ここまでくると、傘が必要になってくるレベルかもしれない。もちろん、傘を持ってはいないのだけれど...
「おーい、玲!」
振り返らなくてもわかってしまう。声の質、朝から騒がしくらい住宅街の静けさなど無視した声量。
「おはよう、祐介」
「今日は一段と寒いな。後少しで卒業って考えるとあっという間だったな。俺らの高校生活」
「そうだね。なんだかんだ僕ら3年間同じクラスだったね」
「ついこの間、入学したような気がするわ。本当時間の流れって早いな」
フッと視線を彼の方へと向ける。声には出さなかったが、祐介の斜め後ろくらいの位置に彼女はいた。
僕の視界にしか映ることのない彼女が、当たり前に日常に溶け込むかのように存在していた。
当然、雄介や周りにいる高校生たちの視界に映ることはなく。
ポツリと孤独を抱えながら、彼女は今日もいつもと変わらず登校していた。
「お弁当は持った?」
「持ったよ。母さん、今日って夜勤だっけ?」
「そうよ。ごめんね、今日は1人になっちゃうけど、ご飯はちゃんと準備しておくから」
「大丈夫だよ。僕はもう18歳だし、それより母さんこそ体調気をつけるんだよ。もう若くはないんだからさ」
当然だが、母の顔には年々皺が刻み込まれている。母は同年代の親に比べると若く見えるが、あくまでもそれは外見。体の内部は、年相応になっているのだから、無理だけはしないでほしい。
「そしたら、玲に面倒みてもらおーっと!」
「はいはい。行ってきます」
「行ってらっしゃい!」
笑顔で見送る母の姿。母の笑顔を見るだけで不思議と元気が湧いてくる。それくらい僕にとって母の笑顔は、欠かせない存在にまでなってしまったらしい。
あの日見た母の涙は、あれ以来見てはいないが、今も人知れず泣いているのだと思ってしまうと心が締め付けられる。
もうすぐで父の命日が近づいている。きっと母もそのことを考えているだろうな。
時間が経ったことで、僕自身泣くことはなくなったが、父との思い出が薄れることはなかった。それは母も同じだろう。
僕よりも長い時間父と寄り添ってきた母も同じ想いなはず。
父さんは僕らの思い出の中で、生き続けている。僕らが忘れない限り永遠と父さんが消えてしまうことはないんだ。
僕の口から吐き出される息が、白く水蒸気のように宙へ舞う。
雲で覆い尽くされる空からは、真っ白な結晶が地に降り注ぐ。
止まることを知らずに永遠とも思えるくらい、何度も何度も僕の額を濡らしていく。
家を出てから10分が経過した。高校までは歩いて20分と比較的近い方なので、天候を問わず普段から歩いて登校している。
10分という短い時間でも空は大きく変化する。先ほどまでの雪が嘘だったかのように、倍以上の勢いで雪が降ってくる。
ここまでくると、傘が必要になってくるレベルかもしれない。もちろん、傘を持ってはいないのだけれど...
「おーい、玲!」
振り返らなくてもわかってしまう。声の質、朝から騒がしくらい住宅街の静けさなど無視した声量。
「おはよう、祐介」
「今日は一段と寒いな。後少しで卒業って考えるとあっという間だったな。俺らの高校生活」
「そうだね。なんだかんだ僕ら3年間同じクラスだったね」
「ついこの間、入学したような気がするわ。本当時間の流れって早いな」
フッと視線を彼の方へと向ける。声には出さなかったが、祐介の斜め後ろくらいの位置に彼女はいた。
僕の視界にしか映ることのない彼女が、当たり前に日常に溶け込むかのように存在していた。
当然、雄介や周りにいる高校生たちの視界に映ることはなく。
ポツリと孤独を抱えながら、彼女は今日もいつもと変わらず登校していた。