翌日には、彼女の机だけでなく、出席簿からも花村佳奈という名前は消されていた。
担任曰く、個人情報で詳しくは話せないらしいが、どうしても彼女について知りたかった僕は、担任に詰め寄った。
しかし、返ってきた答えは朝のホームルームで告げられたものと同じ回答だった。ただ佳奈さんの両親からの申し出で、退学という形になったそうだ。それだけは唯一教えてもらうことができた。
当然、担任は僕が佳奈さんと関わりがあることを知らない。終始、不思議そうにしていたが、そんなこと僕にはどうでもよかった。
周りからしたら、完全に頭のおかしいやつに見えたかもしれない。1度も学校に来ていない人のことについて切羽詰まった様子で、過ごしていた僕の様子は、さぞ滑稽だっただろう。
僕の隣の空席は、本当にクラスに存在しないものとなってしまったんだ。
佳奈さんが僕の前から姿を消して1ヶ月が経過した。
依然、僕らは高校3年生のまま。それも、今日までなのだが。
気温も暖かくなり、僕らを照らす陽光にも温かみのある季節が目前となった今日この頃。
3年間通い詰めた高校を僕らは卒業する。
数えれば、両手では収まりきらないほどの思い出が溢れている。もしかしたら、数年後校舎を見ただけで涙を流してしまうなんてことも...
「れーい!とうとう今日が来ちゃったな。俺卒業したくないよ。玲と離れるなんて嫌なんだけど・・・」
「僕も寂しいよ。でもさ、また会えるじゃん僕らは」
そうだ。僕らはいつだって、連絡さえ取れれば会うことは簡単なんだ。僕の前から消えてしまった彼女とは違って。
「そうだけどさ、進学先が違うのが寂しいわ。思い返せば、高校3年間は何をするにしても近くには、玲がいたからな」
無事祐介は一般受験で、第一志望の都内の有名私立大に合格した。僕らの春から住む県は同じになるが、僕らを取り巻く環境が変わってしまえば、僕らも必然的に距離が空いてしまうのだろう。
寂しい気持ちもあるが、それは仕方がないことでもある。新たな環境には出会いもあれば、もちろん別れだってある。
「祐介」
「ん?」
「今更で悪いが、これからも僕の親友として仲良くしてくれないか?」
「・・・何を今更そんなこと言ってんだよ。俺はずっと玲のこと親友だと思ってたぞ。てか、玲は思ってなかったのかよ。泣くわ」
「ごめんって!」
謝る僕の頭を軽く叩き続ける彼。まだ卒業式すら迎えていないのに、うっすらと涙が溜まって見える。
「親友って言ったこと後悔するなよ。1人暮らし始めたら、しょっちゅう玲の家に遊びにいくからな。だから、彼女は作るんじゃないぞ! 俺が遊びに行きにくくなるからな!」
なんて勝手な理由なんだろうか。彼といたら疲れてしまうだろうなと思ってしまう。でも、今はそれが無性に嬉しく感じてしまう。
それに、僕には彼女なんてできるはずがない。僕はあの日のことをまだ忘れられずにいるのだから。
夢のようだった2日間の出会いを。
担任曰く、個人情報で詳しくは話せないらしいが、どうしても彼女について知りたかった僕は、担任に詰め寄った。
しかし、返ってきた答えは朝のホームルームで告げられたものと同じ回答だった。ただ佳奈さんの両親からの申し出で、退学という形になったそうだ。それだけは唯一教えてもらうことができた。
当然、担任は僕が佳奈さんと関わりがあることを知らない。終始、不思議そうにしていたが、そんなこと僕にはどうでもよかった。
周りからしたら、完全に頭のおかしいやつに見えたかもしれない。1度も学校に来ていない人のことについて切羽詰まった様子で、過ごしていた僕の様子は、さぞ滑稽だっただろう。
僕の隣の空席は、本当にクラスに存在しないものとなってしまったんだ。
佳奈さんが僕の前から姿を消して1ヶ月が経過した。
依然、僕らは高校3年生のまま。それも、今日までなのだが。
気温も暖かくなり、僕らを照らす陽光にも温かみのある季節が目前となった今日この頃。
3年間通い詰めた高校を僕らは卒業する。
数えれば、両手では収まりきらないほどの思い出が溢れている。もしかしたら、数年後校舎を見ただけで涙を流してしまうなんてことも...
「れーい!とうとう今日が来ちゃったな。俺卒業したくないよ。玲と離れるなんて嫌なんだけど・・・」
「僕も寂しいよ。でもさ、また会えるじゃん僕らは」
そうだ。僕らはいつだって、連絡さえ取れれば会うことは簡単なんだ。僕の前から消えてしまった彼女とは違って。
「そうだけどさ、進学先が違うのが寂しいわ。思い返せば、高校3年間は何をするにしても近くには、玲がいたからな」
無事祐介は一般受験で、第一志望の都内の有名私立大に合格した。僕らの春から住む県は同じになるが、僕らを取り巻く環境が変わってしまえば、僕らも必然的に距離が空いてしまうのだろう。
寂しい気持ちもあるが、それは仕方がないことでもある。新たな環境には出会いもあれば、もちろん別れだってある。
「祐介」
「ん?」
「今更で悪いが、これからも僕の親友として仲良くしてくれないか?」
「・・・何を今更そんなこと言ってんだよ。俺はずっと玲のこと親友だと思ってたぞ。てか、玲は思ってなかったのかよ。泣くわ」
「ごめんって!」
謝る僕の頭を軽く叩き続ける彼。まだ卒業式すら迎えていないのに、うっすらと涙が溜まって見える。
「親友って言ったこと後悔するなよ。1人暮らし始めたら、しょっちゅう玲の家に遊びにいくからな。だから、彼女は作るんじゃないぞ! 俺が遊びに行きにくくなるからな!」
なんて勝手な理由なんだろうか。彼といたら疲れてしまうだろうなと思ってしまう。でも、今はそれが無性に嬉しく感じてしまう。
それに、僕には彼女なんてできるはずがない。僕はあの日のことをまだ忘れられずにいるのだから。
夢のようだった2日間の出会いを。