学校の怪談に「トイレの花子さん」という都市伝説があるのは、日本に住んでいる者なら大多数が知っているはずだ。
花子さんに出会うためには、色々な決まりや手順があるらしいが、詳しくはわからないので省かせてもらう。
実は、僕のクラスにも「花子さん」は存在するのだ。トイレとは無関係だが、クラスメイトは皆彼女のことを「花子さん」と呼ぶ。
彼女が花子さんと呼ばれているには理由がある。それは、彼女は僕らが3年生に進級してから1度も教室に訪れていない。
これだけではあだ名としての理由付けは意味不明だが、問題は彼女の座席にあるのだ。
彼女の座席の机には、毎日花瓶に入れられた花が添えられている。まるで、彼女が亡くなってしまった存在かのように。
決していじめではない。誰かが意図して、彼女の机の上に毎日花を添えているのだ。置いている様子を見た者は誰1人いないってのも不自然ではある。
これが原因で彼女は、「花子さん」と呼ばれるようになってしまった。
隣の席に座る僕でさえ、不憫に思ってしまう。なんらかの事情があって休んでいるのに、これではあまりにかわいそうだ。
「お、玲じゃん!今日は珍しく登校するの早いんだな」
「まぁね、昨日寝るのが早かったせいで、早起きしちゃってね」
「どうした!普段なら受験も終わったから夜中までゲームに入り浸っているのに・・・」
驚きの表情を隠せないのか、空いた口が塞がらない彼。
「そういう祐介こそ、受験勉強は大丈夫なの?」
彼...加藤祐介とは、1年生の頃に同じクラスになって以来、3年間同じクラスだった。
彼との関係性は友達以上親友未満。この言葉が、まさにしっくりくるくらい深すぎず、浅すぎないといった関係をかれこれ3年続けている。
話しかけられたら話すし、遊びに誘われたら遊びに行く。至って普通の友達なんだ。でも、親友ではない。
僕の中で立てられた境界線の内側に彼はいない。いい奴に変わりはないが、この境界線を超えてくることができるほど僕は心を許していないのだ。
少なからず彼の方は、僕のことをただの友達とは認識はしていないと思う。勘違いなら恥ずかしいが、多分彼は僕のことを親友だと思っているのではないだろうか。
もしそうだとしたら、僕は最低な奴に限りないが...
「んー、大丈夫ではない!もう毎日が不安で仕方ない。寝ても覚めても勉強のことを考えるなんて、3年ぶりすぎて夜しか寝ることができないわ」
「そっか。大丈夫そうだね。夜ちゃんと寝られているなら問題ないな。それに祐介の成績なら、問題ないでしょ」
「いいよな〜玲はさ、推薦で去年のうちに受験が終わってたんだもんな。一般受験組の俺らからしたら、妬み、僻みの対象だよ。ま、そんなことどうせ気にしないんだろうけど」
「よくわかってるじゃないか。伊達に3年間付き合ってきたわけじゃないな」
「当たり前だろ。3年間で1番側にいたからな!それよりさ、今日も『花子さん』来てないんだな・・・」
視線を僕から隣の空席へと向ける彼。今日も彼の視線の先に映る席には、一輪の花が添えられている。
「そうだね。今日の花はなんだろう」
机の上には見たことはあるかもしれないが、名前は絶対に知らない花が花瓶に生けられている。
徐に祐介が携帯をスクロールする。
「あ、これじゃね?」
彼の携帯に映っていた花と実物の花の色は違えど、見た目は全く一緒だった。名前は、ウインターコスモスという花らしい。
コスモスといえば、普通は秋に咲く花。漢字でも秋桜と書くくらいだ。しかし、今は1月下旬。だから、名前にウインター、冬という名前が刻まれているのかもしれない。
「なんの意味があるのかな?」
「んー、それは『花子さん』に聞いてみないとわからないよな」
「そうだね」
軽く相槌を打つと彼は自分の席へと向かっていった。僕は、彼の背中よりも誰も座っていないはずの席に、座っている彼女の方が気になって仕方がなかった。
花子さんに出会うためには、色々な決まりや手順があるらしいが、詳しくはわからないので省かせてもらう。
実は、僕のクラスにも「花子さん」は存在するのだ。トイレとは無関係だが、クラスメイトは皆彼女のことを「花子さん」と呼ぶ。
彼女が花子さんと呼ばれているには理由がある。それは、彼女は僕らが3年生に進級してから1度も教室に訪れていない。
これだけではあだ名としての理由付けは意味不明だが、問題は彼女の座席にあるのだ。
彼女の座席の机には、毎日花瓶に入れられた花が添えられている。まるで、彼女が亡くなってしまった存在かのように。
決していじめではない。誰かが意図して、彼女の机の上に毎日花を添えているのだ。置いている様子を見た者は誰1人いないってのも不自然ではある。
これが原因で彼女は、「花子さん」と呼ばれるようになってしまった。
隣の席に座る僕でさえ、不憫に思ってしまう。なんらかの事情があって休んでいるのに、これではあまりにかわいそうだ。
「お、玲じゃん!今日は珍しく登校するの早いんだな」
「まぁね、昨日寝るのが早かったせいで、早起きしちゃってね」
「どうした!普段なら受験も終わったから夜中までゲームに入り浸っているのに・・・」
驚きの表情を隠せないのか、空いた口が塞がらない彼。
「そういう祐介こそ、受験勉強は大丈夫なの?」
彼...加藤祐介とは、1年生の頃に同じクラスになって以来、3年間同じクラスだった。
彼との関係性は友達以上親友未満。この言葉が、まさにしっくりくるくらい深すぎず、浅すぎないといった関係をかれこれ3年続けている。
話しかけられたら話すし、遊びに誘われたら遊びに行く。至って普通の友達なんだ。でも、親友ではない。
僕の中で立てられた境界線の内側に彼はいない。いい奴に変わりはないが、この境界線を超えてくることができるほど僕は心を許していないのだ。
少なからず彼の方は、僕のことをただの友達とは認識はしていないと思う。勘違いなら恥ずかしいが、多分彼は僕のことを親友だと思っているのではないだろうか。
もしそうだとしたら、僕は最低な奴に限りないが...
「んー、大丈夫ではない!もう毎日が不安で仕方ない。寝ても覚めても勉強のことを考えるなんて、3年ぶりすぎて夜しか寝ることができないわ」
「そっか。大丈夫そうだね。夜ちゃんと寝られているなら問題ないな。それに祐介の成績なら、問題ないでしょ」
「いいよな〜玲はさ、推薦で去年のうちに受験が終わってたんだもんな。一般受験組の俺らからしたら、妬み、僻みの対象だよ。ま、そんなことどうせ気にしないんだろうけど」
「よくわかってるじゃないか。伊達に3年間付き合ってきたわけじゃないな」
「当たり前だろ。3年間で1番側にいたからな!それよりさ、今日も『花子さん』来てないんだな・・・」
視線を僕から隣の空席へと向ける彼。今日も彼の視線の先に映る席には、一輪の花が添えられている。
「そうだね。今日の花はなんだろう」
机の上には見たことはあるかもしれないが、名前は絶対に知らない花が花瓶に生けられている。
徐に祐介が携帯をスクロールする。
「あ、これじゃね?」
彼の携帯に映っていた花と実物の花の色は違えど、見た目は全く一緒だった。名前は、ウインターコスモスという花らしい。
コスモスといえば、普通は秋に咲く花。漢字でも秋桜と書くくらいだ。しかし、今は1月下旬。だから、名前にウインター、冬という名前が刻まれているのかもしれない。
「なんの意味があるのかな?」
「んー、それは『花子さん』に聞いてみないとわからないよな」
「そうだね」
軽く相槌を打つと彼は自分の席へと向かっていった。僕は、彼の背中よりも誰も座っていないはずの席に、座っている彼女の方が気になって仕方がなかった。