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空になった前菜の皿が下げられると、次は汁物が運ばれてくる。
それをさらに平らげると次は豪華なお造りが四人の前にそれぞれ並んだ。
「相変わらず美味しそうだねえ」と上機嫌に眺める御影の隣から、マツリカがまたしても横取りしようと箸を伸ばす。
しかし御影は慣れた手つきでそれを阻止し、マツリカは不満気に頬を膨らませた。
その向かいで手元の皿に目を落としている栗丘は、先ほどまでとは打って変わって生気がなかった。
どこか上の空で、ただ機械的に目の前の品に箸をつける。
「そんな暗い顔で食べてたら、せっかくの料理が不味くなりますよ」
隣から絢永の厳しい声が飛んできた。
栗丘はちらりと彼に目をやって、「ああ、ごめん」とだけ返す。
「なにショック受けてるんですか。斉藤さんがあなたを殺そうとしていたのがそんなに悲しいんですか? 別に親しい友人でも何でもないんですから、気にする必要もないでしょう。そもそも僕らは警察官なんですから。仕事上、恨みを買う場面なんて色々ありますよ」
「わかってる。けどさ……」
「あなた、僕より五年も先輩なんでしょう? 今までだって、勤務中に逆恨みされることなんていくらでもあったでしょう。勤続六年目にもなって、そんなことでいちいち凹んでたら警察官なんて務まりませんよ」
「そうじゃなくて!」
栗丘はわずかに語気を強め、絢永の顔を真っ直ぐに見上げた。
「俺、あの時の斉藤さんは完全にあやかしに操られていたと思ってたんだ。だから……斉藤さんを怒らせるようなことを、わざと言ったんだ」
「あやかしを引きずり出す算段だったんでしょう。それがどうしたんですか」
「斉藤さんを傷つけるような言葉を、俺は何度も口にしたんだ。斉藤さんが怒って、悲しそうにしていたあの反応は、あの人の本心だったのに……」
そう訴えかける栗丘の顔は、今にも泣き出しそうだった。
涙こそ見せていないものの、その瞳の表面はやけに潤いを帯びて揺れている。
おそらくは罪悪感に苛まれているのだろう。
自分の予想とは反する栗丘の反応に、絢永は調子を狂わされた。
「……なんだ。そんなことですか」
早とちりした自分を振り払うように、絢永は湯呑みのお茶を喉へ流し込む。
「俺、斉藤さんに謝らなきゃ。あんな酷いことを言って傷つけたのに、このまま何もなかったような顔なんてできないよ」
「やめてください。下手に接触してあれこれ質問されたら後々面倒です。彼にあやかしが見えない以上、どうやったって納得のいく説明はできないんですから」
「でも……」