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 絢永の運転するパトカーで一旦警視庁舎へと戻り、そこで帰り支度を済ませると、三人はそこから歩いて予約した店へと向かった。
 道中、栗丘がやけにニヤニヤと頬を緩ませていたので、

「なんです? 気持ち悪い」

 絢永が不快さを露わに指摘すると、

「んー? 別にぃー?」

 と、栗丘はへらへらとしたまま受け流す。
 その様子がさらに不快で、絢永はいつものように溜息を吐いた。

「まあ、だいたい想像はついてますけどね。大方、さっき御影さんに褒められたのが嬉しかったんでしょう。一応あなたのためにも言っておきますけど、御影さんはああいう適当なことを簡単に口走る人なので、あまり真に受けない方がいいですよ」

「やだなあ、絢永くん。人聞きの悪い」

 本当のことじゃないですか、と呆れ顔で言う絢永の声は、もはや完全に浮かれてしまっている栗丘の耳には届かなかった。

 やがて道の先には目的地である店が見えてくる。
 飲み屋街の一角にある老舗の料亭だ。
 その外観を見て栗丘は一瞬財布の中身を心配したが、「今日は私の奢りだから」と御影に言われてホッとする。

 予約の時間は午後六時。
 絢永が時計を確認して「丁度良い時間ですね」と言うと、御影はこくりと一つ頷いて言った。

「あの子は先に着いてるだろうから、もしかしたらもう食べ始めているかもしれないね」

 その発言に、栗丘はハッと思い出す。

「そういえば、今日のメンバーは四人って言ってましたよね。特例災害対策室って、御影さんたちの他にももう一人いるんですか?」

 今夜の歓迎会は四人で予約を取っている。
 まだ見ぬもう一人の存在は、栗丘にはまだ説明されていない。

「いやいや。対策室には今のところ私たちだけだよ。あやかしが見える人間はそう簡単には見つからないからね」

「え? じゃあ、もう一人は別の部署の人なんですか?」

 予想外の返答に、栗丘は首を傾げる。

「別の部署というか、そもそも警察の人間じゃないよ。でも完全な部外者ってわけでもない。その子のことはとりあえず『可愛いゲスト』とでも思ってくれたらいいかな」

「えっ、『可愛い』……?」

 御影の口にしたそのワードに、栗丘は目を輝かせて食いつく。

「も、もしかして女の子ですか?」

「うんうん。とびっきり可愛い女の子だよ。しかもまだ十代!」

「じゅっ……!?」

 うひゃーっ! と一体何を想像したのか、栗丘は真っ赤になった顔を両手で隠す。
 その様子を隣で静観していた絢永は、

「『可愛い』、ねぇ……」

 と、遠い目をしてぽつりと呟くのだった。