「協力? って、何をすればいいんですか?」

「我々の部署、『特例災害対策室』に所属し、共にあやかしを退治するための捜査に加わってもらう」

 特例災害対策室。
 そんな名前の部署は、栗丘の知る限りでは聞いたこともなかった。

「と、いうわけで! 今回の斉藤さんの件は栗丘くんと絢永くんとでしっかり協力して捜査に当たってね」

 今日はこれにてお開き! とでもいうように、御影はぱんっと胸の前で手を合わせる。

「はあぁ!?」

 栗丘と絢永が同時に叫び、御影はへらへらと笑った。

「いやいやいやいやいやいや。なんで僕がこんな落ちこぼれと一緒に捜査しなきゃいけないんですか!? まだ彼を引き入れるとは決まっていないんでしょう!?」

「俺だってこんな奴は願い下げです!」

「あっはっはっは。まあ、せいぜい頑張りたまえ」

 からからと笑いながら、御影はくるりと踵を返して夜の街へと消えていく。
 絢永は慌ててその後を追おうとしたが、何かを思い出したように一度立ち止まると、再び栗丘の元へと戻ってくる。

「何だよ。まだ文句が言い足りないのか?」

 栗丘が身構えると、相変わらず不機嫌な顔をした新米警部補は胸ポケットから何かを取り出した。

「財布。さっき盗られたでしょう」

 そう言って絢永が差し出したのは、確かに先ほどパンク系少女に盗まれた栗丘の財布だった。

「お、俺の財布! お前が取り返してくれたのか……?」

 もはやすっかり忘れていたそれを受け取りながら、栗丘は信じられないという目で絢永を見上げる。

「もしかして、お前って意外とイイ奴……?」

「御影さんに命令されただけです。気持ちの悪い勘違いをしないでください。それに、あなたもこんな簡単に財布を盗まれるようじゃ、警察官は勤まりませんよ。もっと自覚を持って行動してください」

 最後に嫌味ったらしくそう言い残して、新米のエリート後輩は遅れて上司の後を追った。

 その場に一人残された栗丘は、ぽかんと呆気に取られたまま道の先を見つめる。

「……やっぱ、嫌な奴!」

 夕空の下で張り上げたその声を聞きつけて、交番の中から不思議そうに藤原が顔を覗かせた。