「宇津木? なんだよ、邪魔すんな」

「女の子に乱暴してるのを見過ごすわけにはいかないだろ」

「こいつはいいんだよ、俺のなんだから」

「そうなのか? 藍」

 藍に視線を向けた陽介は、ぎょっとする。

 藍は、ぽろぽろと子供みたいに泣いていた。陽介の問いに、青ざめた顔で首を振る。


「わ、わかんない……」

「って言ってるけど? どういうことだ、近藤」

 藍の泣き顔を見て、陽介の声が低くなる。近藤は、そんな陽介から目を放して藍を睨みつける。

「はあっ?! ふざけんなよ、俺のことからかってたのか?!」

「そ、そんなこと、しないもん。勝君、怖いよお」

 震えながら、藍は両耳をふさぐとその場にしゃがみ込んでしまった。

 舌打ちをして、近藤は藍に背を向けた。


「もういい! お前なんか、こっちから願い下げだ! ブス!」

 そうして、自分の自転車を乱暴に引き出すと行ってしまった。陽介はその姿を見送ることなく、藍の隣へ座り込む。

「ひどいこと言うな、あいつ。大丈夫か? 藍」

「陽介君……」

 しゃくりあげる藍は、涙目で陽介を見上げる。

「怖かったよう……」