出店のほうに向かって三人(+一幽霊)で歩きながら、私は聞いた。
「二人は、普通に、桜見に来てたの……かな?」
聞くと、三上さんが首を横に振った。
「ううん。あたしたちが見に来たのは、弘前城」
「え?……城?」
「ま、聖地巡礼ってやつかな」
なんだか早口になって説明し始める二人。圧倒されたけど、要約するとこういうことだった。
全国のお城を擬人化したアニメ「城★男子」に、孤高の津軽弁イケメン「弘前城」ってのが出てくる。アニメのオープニング映像に桜の季節の弘前城が映るから、改めてちゃんと実物を見てみたかった。
「奈良岡ちゃんもさ、見てみなよ。絶対ハマるし、日本史の勉強にもなると思うよ」
身を乗り出して言う古川さん。思わず笑顔がぎこちなくなるけど、二人はまったく気にしている風はない。
「ほんとに、こんな身近に『弘前城』がいるなんて恵まれすぎですよねあたしたち」
三上さんが言うと、古川さんはべっ甲メガネの奥の目をきらっと光らせた。
「まあ、推しは『島原城』なんだけどね。本気で考え始めてるよ、長崎の大学への進学」
「へ、へぇ……」
想像以上に独特な楽しみ方をしていた二人だけど、せっかく進めてもらったんだし、家に帰ったらちょっと調べてみるか、「城★男子」。
「孤高の津軽弁イケメンって、俺のことだべか」
横でなんかほざいてる霊がいるけど、スルーだ、スルー。
その後、私は二人が持っているのと同じチーズハットグを買い、二人も追加でお団子を買って、私たちは三人でベンチに座った。そしてまた、美味しいものを食べながら、他愛もない話をする。思いのほか盛り上がって、楽しかった。話してみて、初めて気が合うことが分かった。
最後、私は勢いのままに言ってみた。
「……明日とかさ、お昼一緒にお弁当食べていい?」
返事を待つ間も与えず、古川さんが食い気味に言う。
「え、全然いいよー!」
「でもマジで、オタクトークしかしてないけどそれでもよければ」
「あ、ありがとう……!」
よかったぁ……!
横を見ると、桜のハートから離れたせいで少し輪郭が薄くなり始めているフネが、胸の前でパチパチと嬉しそうに手をたたいていた。私は古川さんたちにバレないよう、グッと親指を立てて見せる。
「二人は、普通に、桜見に来てたの……かな?」
聞くと、三上さんが首を横に振った。
「ううん。あたしたちが見に来たのは、弘前城」
「え?……城?」
「ま、聖地巡礼ってやつかな」
なんだか早口になって説明し始める二人。圧倒されたけど、要約するとこういうことだった。
全国のお城を擬人化したアニメ「城★男子」に、孤高の津軽弁イケメン「弘前城」ってのが出てくる。アニメのオープニング映像に桜の季節の弘前城が映るから、改めてちゃんと実物を見てみたかった。
「奈良岡ちゃんもさ、見てみなよ。絶対ハマるし、日本史の勉強にもなると思うよ」
身を乗り出して言う古川さん。思わず笑顔がぎこちなくなるけど、二人はまったく気にしている風はない。
「ほんとに、こんな身近に『弘前城』がいるなんて恵まれすぎですよねあたしたち」
三上さんが言うと、古川さんはべっ甲メガネの奥の目をきらっと光らせた。
「まあ、推しは『島原城』なんだけどね。本気で考え始めてるよ、長崎の大学への進学」
「へ、へぇ……」
想像以上に独特な楽しみ方をしていた二人だけど、せっかく進めてもらったんだし、家に帰ったらちょっと調べてみるか、「城★男子」。
「孤高の津軽弁イケメンって、俺のことだべか」
横でなんかほざいてる霊がいるけど、スルーだ、スルー。
その後、私は二人が持っているのと同じチーズハットグを買い、二人も追加でお団子を買って、私たちは三人でベンチに座った。そしてまた、美味しいものを食べながら、他愛もない話をする。思いのほか盛り上がって、楽しかった。話してみて、初めて気が合うことが分かった。
最後、私は勢いのままに言ってみた。
「……明日とかさ、お昼一緒にお弁当食べていい?」
返事を待つ間も与えず、古川さんが食い気味に言う。
「え、全然いいよー!」
「でもマジで、オタクトークしかしてないけどそれでもよければ」
「あ、ありがとう……!」
よかったぁ……!
横を見ると、桜のハートから離れたせいで少し輪郭が薄くなり始めているフネが、胸の前でパチパチと嬉しそうに手をたたいていた。私は古川さんたちにバレないよう、グッと親指を立てて見せる。