クマちゃんは現在一人でお留守番をしている。
『俺達はしばらくギルドの会議で戻れないから、ドアをカリカリしないように』
最近小言が多いリオの言い付けを守り、ドアには近付いていない。
再びルークに置いていかれてしまったのは悲しいが、クマちゃんにもやらなければいけない事があるのだ。
リュックの中から見つけた小さな本を開く。
《はじめての工作》
―初級編―
・元になる素材と魔石を用意し、作りたいものを想像する。
・杖で魔力をそそげばできあがり。
なんだか簡単そうに見える。
うむ、と頷く。
この本によると、作りたい物に合わせて素材を探さなければいけないらしい。
魔石の入手はどうすればいいのだろうか。
とりあえず部屋の中を探索してみよう。
◇
「ただいま~。って部屋暗!! この部屋めっちゃ暗いんだけど!!」
リオはドアを開けてすぐに部屋の異常に気が付いた。
いつもは自動でつくはずのランプが消えている。
そして暗闇の中で白っぽい何かが動いている。
同時に部屋に戻ってきたルークは夜目が利くのか、しなやかな動きで暗闇の中にいるクマちゃんを掬い、腕に抱えた。
もふもふの顎の下を撫で、長い指を器用に動かし曲がっている赤いリボンを直す。
そして、そのまま何も言わずに部屋を出ていった。
「ぜってー飯食いに行っただけでしょあれ」
今朝方期待を踏みにじられ心が擦り切れているリオは、暗い闇に包まれた部屋の中で、孤独に呟く。
そろそろ夕食の時間だ。
あのルークが部屋の明暗ごときを気にするはずがない。
◇
リオの中で容疑者は一人しかいない。
だが証拠がないため捕まえることが出来ない。
あの小さなもふもふがひとりで、届かないはずの壁の魔石をすべて外せるとも思えなかった。
捜査を打ち切り、ギルド職員に冷たい目で見られながら、始末書を書く。
嘘はよくない。
理由もなく〝全部なくしました〟と書くわけにもいかない。
真実は後でマスターに報告しよう。
今はとにかく魔石が欲しい。
リオの願いも虚しく、外壁に並ぶその窓は、ひとつだけ、ずっと暗いままだった。
『俺達はしばらくギルドの会議で戻れないから、ドアをカリカリしないように』
最近小言が多いリオの言い付けを守り、ドアには近付いていない。
再びルークに置いていかれてしまったのは悲しいが、クマちゃんにもやらなければいけない事があるのだ。
リュックの中から見つけた小さな本を開く。
《はじめての工作》
―初級編―
・元になる素材と魔石を用意し、作りたいものを想像する。
・杖で魔力をそそげばできあがり。
なんだか簡単そうに見える。
うむ、と頷く。
この本によると、作りたい物に合わせて素材を探さなければいけないらしい。
魔石の入手はどうすればいいのだろうか。
とりあえず部屋の中を探索してみよう。
◇
「ただいま~。って部屋暗!! この部屋めっちゃ暗いんだけど!!」
リオはドアを開けてすぐに部屋の異常に気が付いた。
いつもは自動でつくはずのランプが消えている。
そして暗闇の中で白っぽい何かが動いている。
同時に部屋に戻ってきたルークは夜目が利くのか、しなやかな動きで暗闇の中にいるクマちゃんを掬い、腕に抱えた。
もふもふの顎の下を撫で、長い指を器用に動かし曲がっている赤いリボンを直す。
そして、そのまま何も言わずに部屋を出ていった。
「ぜってー飯食いに行っただけでしょあれ」
今朝方期待を踏みにじられ心が擦り切れているリオは、暗い闇に包まれた部屋の中で、孤独に呟く。
そろそろ夕食の時間だ。
あのルークが部屋の明暗ごときを気にするはずがない。
◇
リオの中で容疑者は一人しかいない。
だが証拠がないため捕まえることが出来ない。
あの小さなもふもふがひとりで、届かないはずの壁の魔石をすべて外せるとも思えなかった。
捜査を打ち切り、ギルド職員に冷たい目で見られながら、始末書を書く。
嘘はよくない。
理由もなく〝全部なくしました〟と書くわけにもいかない。
真実は後でマスターに報告しよう。
今はとにかく魔石が欲しい。
リオの願いも虚しく、外壁に並ぶその窓は、ひとつだけ、ずっと暗いままだった。